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脂肪の吸収

食べ物の行方シリーズ

以前のブログで「食べ物の行方」として、たんぱく質の体内での消化・吸収を取り上げました。
たんぱく質が恐ろしく速いスピードで、分子レベルで入れ替わることを突き止めたのが、シェーンハイマーでしたが、彼は、脂肪の動きを調べることにもチャレンジしています。


一般的に糖質やたんぱく質に比べて、貯蔵物と考えられているのが脂肪ではないでしょうか?
ダイエットや健康管理の槍玉にされる脂肪ですが、摂取した脂肪はどのように変化しているのでしょう。

脂肪には窒素が含まれていません。
そこで、シェーンハイマーは窒素の代わりに水素の同位体を用いて、脂肪の動きを調べました。

彼の予想では、エネルギーが必要な場合に摂取された脂肪のほとんどは、体内で燃焼され、ほんの少量だけが体内に蓄えられるだろうというものでした。
ところが驚くべきことに、体重が減少中で、エネルギーが必要とされている時にでさえ、消化・吸収された脂肪の大部分を体内に蓄積していることがわかりました。
それまでは、脂肪組織は余分なエネルギーを貯蔵する倉庫であると見なされていたのです。
物流に例えると、大量の仕入れがあった時はそこに蓄え、不足した時にだけ搬出するものであると思われていた脂肪でしたが、貯蔵庫の外で需要と供給のバランスがとれている時でさえも、内部の在庫品は運び出されて、その一方で新しい品物を運び入れることが繰り返されているということです。
このことは、脂肪組織もタンパク質と同様に、驚くべき速さで、その中身を入れ替え、次々と新しい組織へと変貌していることを意味しています。

私たちは、自らの肉体について、外界と隔てられた個物としての実体があるかのような感覚を持ってしまいます。
ところが、たんぱく質だけでなく、脂肪組織にでさえも、絶え間のない分解と再生が繰り返されており、分子レベルでの固定的な担保と呼べるものは存在しないということがわかったことになります。

 

東洋医学では、「胃の気」を重視します。

胃の気は、消化・吸収を意味することで、生命活動を維持する上で不可欠であり、その欠乏は「死」を意味します。

糖質・たんぱく質・脂質の三大栄養素のどれもが、分子レベルで常に入れ替わっているということは、「個」としての実体は流動的で、固定的なものは存在しないことを示しています。

それゆえに、胃の気を大切にすることは、生命においても、健康においても、非常に重要であることを再確認してもらえる貴重な資料として参考にしていただきたいと思います。

 

治療において、「胃の気」を高めることはとても重要な要素なのです。

 

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