花と美
古来より、美しいものを花に喩えることが良くあります。
その一つに「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」があります。
美しい女性の姿を三種類の花の様子に喩えていると伝えられています。
とくに和服をきている女性の姿のありようということらしいのですが、凛とした立ち姿が゛芍薬゛、柔らかくゆったりと座る姿が゛牡丹゛、ゆらゆらと優雅に歩く姿が゛百合゛の花といったような感じで受け入れられていることが多い印象です。
これらの花は、観賞用としても親しまれてきた歴史があります。
開花の時期に特徴があり、4月末から5月の始めが゛牡丹゛、5月中旬から6月末までが゛芍薬゛、6月から8月が゛百合゛といった具合に、順番に咲いていきます。
花が好きな方でしたら、初夏の時期から順番に途切れることなく移り行く美しい花を愛でることができますから、日本人に人気があるのもうなずけます。
牡丹の原産地は中国の北西部であると推定されており、聖武天皇から平安時代初期に、観賞用ではなく、薬用の目的で導入されました。
゛牡丹゛の花は非常に豪華な姿なので、中国では「花王」と賞されるほどです。
゛芍薬゛は、牡丹と同じボタン科の植物です。
「花王」と呼ばれる゛牡丹゛に対して、花の宰相の意味で「花相」と呼ばれています。
花の中でも「王」と「宰相」が共演しているですから、観賞用としては最高峰と呼べます。
゛百合゛はユリ科の花で、日本はユリの宝庫とも呼ばれています。
世界で80種ある原種の内、6分の1が日本原産と言われていて、見た目の美しい花はもちろんのこと、香りの強い花や変わった形の花びらのものまで、多種多様だそうです。
いずれの花も日本人には昔から馴染みが深く、鑑賞の方法として、「芍薬は立ち上から、牡丹は座りながら、百合は歩きながら」が最適であるという説もあるようです。
百合だけが歩きながらというのはおかしい感じがしますが、いろんな角度から見るのが良いと解釈すれば、納得しやすいかもしれません。
このように花の美しさに注目が集まりやすいのですが、それ以外にも、三種類の花には重要な共通点があります。