鍛練と炎症反応
「健全なる精神は、健全なる肉体に宿る」という言葉を耳にすることがあります。
強い体力が「行動力を決める」ところがあります。
身体を鍛えることは、心身共に良い影響を与えることになります。
しかしその一方で、身体を鍛えることには「苦痛」が伴います。
それは、リハビリなどの軽めのトレーニングでさえも同じことが言えます。
「no pain no gain」とスポーツでは呼ばれたりしますが、運動やトレーニングの習慣が続かない方の理由はこの苦痛にあるのかもしれません。
一般的に嫌がられるトレーニングの苦痛は「筋肉痛」ですが、これにはとても重要な意味があります。
「筋肉痛」によって生じるものは、肉体の「炎症」です。
炎症そのものは、実は人体にとって有害な一面があります。
炎症反応が起こる際に、オータコイド類と呼ばれる化学伝達物質が生産されます。
ちなみにオータコイドには、ギリシャ語で「自分自身を調節する物質」という意味があります。
オータコイド類には、セロトニン・ヒスタミン・ブラジキニン・プロスタグランジンなどが含まれていて、局所で生産されて、局所で分解されていくことになります。
炎症反応が起こる限られた範囲内で、細胞から細胞へと情報を伝達する役割があります。
そして、炎症には、発熱、疼痛、腫脹、発赤、機能障害という5つの徴候があります。
これこそが、私たちが病気になった時に悩む症状の数々なのです。
炎症自体は、局所を犠牲にして、全身を守るという免疫的にはとても重要な要素ですが、局所には5つの徴候のどれかが残ることがあり、苦痛を伴う症状となります。
このことから、身体を鍛えることはわざわざ自ら進んで病気になるようなことをするのに等しいとも考えられます。
しかし、スポーツ選手がそうであるように、上手に身体を鍛えることで、超人的な身体能力を身に付けることも可能となります。
身体を酷使すると身体は当然壊れてしまいますが、鍛練には身体をレベルアップする秘密があります。
その秘密のカギは、「ホルミシス」にあります。
「ホルミシス」とは、ある物質が高濃度、または大量に用いられた場合は有害となるのですが、 低濃度、または微量に用いられると先ほどとは異なり、有益な作用をもたらす現象のことを言います。
つまり、何らかの有害性を持つ要因を、有害となる量に達しない量を用いることで有益な効果をもたらすことが可能になることを意味するのです。
その要因は、物理的(外傷性による怪我)、化学的(大気汚染・花粉)、生物学的(細菌・ウイルス)なもののいずれかとなります。
運動による鍛練は、物理的な要因ということになります。