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健康と病

健康と病

「健康」とは、どういった状態のことでしょうか?

 

私たちは、健康でいることがあたりまえのように思いがちです。

身体が自分の思い通りに動いて、苦痛や不自由さを感じない日常では、「健康のありがたさ」を実感することがないからでしょうか。

健康とは、失ったときに、実感できるものなのかもしれません。

そのため病で苦しんでから、悔やむ人が多いように思います。

 

それに対して、「病」とはどのように受け止めればよいのでしょうか。

 

「闘病」という言葉が示すように、病を敵対するもののように考えることがあります。

確かにウイルスや細菌のような病原体による病は、我々の外部から内部に侵入することで発症します。

しかし、これらの病原体は日常的に生活環境に存在しており、感染して病を発症する人もいれば、感染しても病を発症しない不顕性感染と呼ばれる状態となる人もおられます。

さらに感染すらしない人も多数おられることから病原体だけが病の原因とは断定することはできません。

細菌の中には、腸内細菌のように我々と共生活動を営むものもあり、悪玉細菌、善玉細菌と簡単に区別できるほど単純なものでもないようです。

痛みや痺れ、それに伴う様々な機能障害は、身体に生じた「炎症反応」であり、我々にとっては苦しみの一種であります。

お釈迦様が、「四苦」として、「生、老、病、死」と定めたことがうなずけます。

その苦しみゆえに、病を忌み嫌うことはしかたないことです。

そのことで、「健康と病は正反対に位置するもの」と考える方が多いように思います。

 

ところが健康も病も「静的な状態」ではなく、交互に入れ替わる「動的な状態」であることを忘れてはいけません。

健康状態と病の状態は、本来、対立するような関係にあるものではなく、健康状態のレベルによって段階的に区別されるものであると考えられます。

なぜなら、私たちの身体には、意識する必要がない体調管理システムが備わっており、常に身体を一定の健康状態に保とうとその機能が働き続けているからです。

 

身体を一定に維持する機能を「ホメオタシス」と呼んでおり、自律神経、ホルモン、免疫の三種類がそれを担っています。

何らかの理由で身体が傷ついたとしても、ホメオタシスという体調管理と治癒を兼ね備えたシステムの働きで、元の健康な状態へと回復します。

ホメオタシスがきちんと働き、身体のバランスを整えてくれている状態を維持できていれば、健康度が高く、頭痛や肩こり、腰痛や神経痛といった不定愁訴に慢性的に悩むことはありません。

しかし、何らかの原因でホメオタシスの機能が低下したり、働きを超えるような負荷が身体に生じたりした場合に、身体のバランスを維持できなくなり、健康度が低下し、病の状態へと陥ることになります。

 

健康と病の双方は、どちらも動的な状態であり、健康度の高低さによってスライドし、入れ替わるものであるという考え方が大切です。

そして、自らに備わっている治癒システム(ホメオタシス)を大切にし、それが働きやすい環境を整えることが病から健康へとスライドする唯一の方法であることにも留意してほしいと思います。

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