ラグビーBK選手の治療
- 6月10日
- 読了時間: 4分

「肉離れだと思われていた痛みの正体」
続いてご紹介するのは、同じく大学ラグビーで活躍するBK(バックス)のGさんの症例です。
Gさんはチームの中でも俊足を誇る選手で、グラウンドを縦横無尽に駆け回るタイプです。体脂肪率も低く、日頃から高い意識で身体づくりに取り組んでいることが伝わってきます。
そんなGさんが試合前日に来院された理由は、右太ももの痛みでした。
ダッシュや加速時に違和感があり、翌日の試合を控えて不安を感じていたのです。
さらに以前から右肩に脱臼癖があり、肩を挙上する際の痛みと可動域制限も抱えていました。
まず気になったのは、太ももの痛みの訴え方でした。
一般的に肉離れを起こした場合、負傷部位の腫れや緊張だけでなく、時間の経過とともに重力の影響で内出血が下方へ移動し、膝周辺に違和感や痛みが現れることが少なくありません。
ところがGさんの場合、痛みを訴えていたのは臀部の付け根付近でした。
この時点で私は、
「本当に太ももの肉離れなのだろうか」
という疑問を持ちました。
そこで、今回の負傷後にどのような検査や施術を受けてきたのか詳しく聞いてみました。
すると、あるトレーナーから「腸腰筋も傷めている可能性がある」とアドバイスを受けていたことが分かりました。
一方で、実際に行われていた施術は太ももへの低周波治療が中心で、本人としてはほとんど改善を実感できていないとのことでした。
そこで改めて身体全体を診ていくことにしました。
腹部を触診すると、右下腹部に明らかな硬結が認められました。
この反応にはさまざまな意味がありますが、まずは筋肉系の負傷や過緊張を示す重要なサインとして捉えます。
さらに脈診を行いながら全身の状態を確認していくと、腰部に明らかなアンバランスが存在していることが分かりました。
実際に骨盤を確認すると、腸骨稜の高さに左右差があり、骨盤の傾きがはっきりと現れていました。
走る、切り返す、加速する。
こうしたラグビー特有の動作では、股関節や骨盤の状態がパフォーマンスを大きく左右します。
そのためGさんにも、先に紹介したFWのKさんと同様に、股関節と骨盤を中心とした調整を行いました。
すると施術前には十分に開かなかった右股関節が、施術後にはスムーズに開脚できるようになりました。
本人も可動域の変化に驚いていました。
さらに右肩の状態を確認すると、こちらも単純な肩の問題ではないことが分かりました。
骨盤の調整だけでも症状は軽減しましたが、それだけでは十分ではありません。
身体全体の診断を進めると、蓄積した疲労が深く関与している反応が認められました。
そこで疲労回復を目的とした調整を加えたところ、肩周囲の疼痛が大きく軽減し、肩の動きも改善しました。
今回の症例でも改めて感じたのは、痛みの出ている場所と原因のある場所が必ずしも一致しないということです。
肩の痛みであっても、その背景には骨盤や腰部の問題が存在することがあります。
また太ももの痛みと思われていた症状も、実際には股関節や骨盤、さらには体幹のバランスが大きく関与していた可能性が考えられました。
翌日の試合後、私も動画でプレーを確認する機会がありました。
Gさんは前半・後半を通じて交代することなくプレーし続け、何度もグラウンドを力強く駆け抜けていました。
俊足を生かしたランニングや切り返しも見られ、試合中に痛みを強く感じている様子は画面越しには見受けられませんでした。
もちろん試合中の感覚までは分かりませんが、少なくとも最後まで走り切ることができた姿を見て、施術者として大きな安堵を覚えました。
今回の症例は、画像検査や局所の評価だけでは見えにくい身体全体のつながりを、改めて教えてくれた症例でした。
東洋医学では、痛みのある場所だけを追いかけるのではなく、身体全体のバランスや関連性を重視します。
脈診や腹診を通じて身体の状態を把握し、股関節や骨盤、腰部との関係を丁寧に整えていく。
その結果として、症状の改善だけでなく、本来のパフォーマンスを発揮しやすい身体づくりにつながることがあります。
試合前という限られた時間の中で、改めて東洋医学の診断と治療の有効性を実感することができた症例でした。
和鍼治療院では、スポーツ障害の治療だけでなく、試合前のコンディショニングやパフォーマンス維持のための施術も行っています。
痛みを抱えながら競技を続けている方、なかなか改善しない違和感に悩んでいる方は、一度ご相談ください。身体全体のつながりという視点から、競技力向上をサポートいたします。




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