樹木と水 水の通り道


地球温暖化に伴い、夏場の熱中症対策は、生命活動に欠かせないものとなっています。

水分補給がよく話題になりますが、水の循環に関する話を聞くことはありません。

暑さばかりに注目が集まるためか、それに比べて湿度への意識が薄いように感じます。

ある気象予報士よると、熱中症対策のポインには3つあるそうです。

それは温度、湿度、照り返しで、1:7:2の割合で人体に影響するそうです。

温度に対して7倍の影響がある湿度を無視することはできません。

しかもこの湿度の影響は熱中症だけでなく、喘息、蓄膿、めまい、アトピー性皮膚炎、中耳炎、頭痛、関節痛、胃腸障害、食欲不振、うつ病など、多くの症状の原因となります。

湿度とは、東洋医学では「湿」と呼ぶ「邪気」のひとつであり、水と深く関係します。

水分補給ばかりを意識すると、かえって湿邪による病気が悪化したり、新たに病気を発症したりする可能性があることを知ってほしいと思います。

私たちの養生において、三焦を代表として、多くの臓腑がかかわる「水」に関する代謝や循環を熟知することがとても重要なのです。


そこで自然界に目を向けてみましょう。

水の循環が大切であることは、樹木にとっても同じです。

樹木は草花と異なり、高さが数十メートルにもなります。

樹木のてっぺん付近の葉まで水を届けるのは容易ではなさそうです。

どのようにして水を汲み上げているのでしょうか。

樹木には、「導管」と呼ばれる水の通路が存在します。

この導管ですが、常緑樹では0.5ミリ、針葉樹では0.02ミリの太さです。

導管は、細胞壁が筒状に繋がって中空の管となったものです。

細胞壁は植物の細胞にだけ存在しますが、導管を形成すると細胞は死に、細胞壁だけが残って水道管のように水を運ぶ役割を担います。

一方、樹木の葉や根には、細胞が生命活動を続けているので、浸透の力が働きます。

ある細胞の内側にある糖分が隣の細胞の糖分よりも多い場合、細胞内の水分は細胞膜を通過して、糖分が多い細胞内へと流れ込むことになります。

両細胞内の糖分濃度が等しくなることで、この水分の流れは止まります。

確かにこの仕組みを使えば、細胞から細胞へと水分を送ることができます。

根から樹木のてっぺんの葉まで、順番に水を届けるという考え方です。

ところが根と葉をつなぐ幹の導管には、肝心の細胞がありません。

細胞壁で出来た水道管が幹の中に並んでいるだけですから、地上から数十メートルまで水を運ぶことは不可能です。


そこで注目されるのが、水の「毛管現象」です。

毛管現象とは、「毛管力」とも呼ばれて、水を持ち上げる力のことです。

例えば、コップに水を注ぐ際、縁のギリギリまで入れすぎてもすぐにあふれることなく、水面が数ミリほど盛り上がります。

この現象が毛管現象です。

もしも毛管力が働かなければ、コップの縁の高さと水平のところまでしか水を入れることができないことになります。

容器が細くなればなるほど、液体は重力に逆らって水面をより高く押し上げます。

導管の太さは針葉樹で0.02ミリですが、毛管力だけで数十メートルもの高さまで水を持ち上げることができるのでしょうか。

毛管現象で上がる水の高さは、最大で1メートルぐらいだそうです。

1メートルでもすごい力だと私は思いましたが、それでも数十メートルには遠く及びません。


樹木のてっぺんまで水を輸送する力はどのような仕組みによるものなのでしょう。

後半へ続きます。