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  • 小島 秀輝

銀盤のフェアリー


ダンスや歌を指導しているAさんからある小学生の治療を依頼されました。

早速、お母さんから治療予約の電話がありました。

その時、Mちゃんの症状を聞いてると、11月から「ふらつき」があり、なかなか治らないとのこと。

病院で検査と診断を受けてみても原因が分からず、親子共々困っているとのことでした。


電話の会話では、メニエール病を疑いました。

しかし、お菓子など飲食関係には問題が無いようなので、実際の治療をしてみないと原因を把握できない状況でした。


治療当日、お母さんと一緒にMちゃんは来院。

最初の印象は、明るくて、溌剌とした感じです。

どんな時、どんな感じでふらつくのか、詳しく聞くことから始めました。

そもそもリンクの上ではクルクル回るのではないかと疑問に思っていたので、練習中のふらつきについて聞いてみました。

意外なことに、リンクでの練習ではふらつきはないようです。

はてさてどういうことでしょう。

練習会場ではふらつくことがあるようで、それは自分の演技をタブレットで確認する時のようです。

それとスケート以外では、学校の教室で授業が終了し、立ち上がる際にも頻繁にふらつくとのことでした。

ますます何が何だか分からなくなり、ふらつきの原因究明が難しくなりました。

いよいよMちゃんの身体の声を聴くしかなくなったのです。


「声を聴く」というのは、東洋医学ではよく使われる用語で、四診でもって身体を分析することです。

四診には、望、聞、問、切の診断方法があり、その中でも切診は東洋医学特有の診断技法です。

切診には、脈診、腹診、舌診、背候診(背中のツボで内臓を診断)などがあり、身体のバランスの崩れ方や原因の手掛かりを手の感覚で拾い上げていきます。

身体が語る声なき声を聴き分ける技術が必要となります。


身体の声があまりに難題すぎて、手掛かりを求めて脈診をしながら鍼を打つことにしました。

まず、ストレスがあることがわかるので「気の流れ」を整えました。

会話中も笑い声が絶えないほど明るい性格なので、悩みがあるようには感じなかったです。

スケートの大会や練習でプレーシャーがあるのか質問してみたのですが、スケートは楽しくて仕方がないほど好きな様子。

どんな大会や進級テストでも、ほとんど緊張しないとのこと。

身体にストレスの影響はあるのに、ストレスの原因もよくわかりませんでした。


次に脈診でわかったことは、やや疲労が残っていることでした。

夏ごろから練習場が変わり、それに伴い練習時間も増加したようです。

一週間に2回だった練習が4回となり、リンクへ通う時間も以前よりも長くなりました。

睡眠時間を減らすほどの影響はないようですが、小さい体には負担が大きいのではないかと推察できます。

Mちゃんも軽く疲労は感じているようですが、スケートができる楽しみが勝るようです。

学校行事のマラソンでもトップを走るほどの運動能力があるようなので、体力にも問題はなさそうです。


ここまで治療を進めてきて、一旦、身体の状態を見てもらいました。

Mちゃんの感じでは少し体が楽になり、ふらつきが軽減したようです。

それでも、すっきりと良くなるほどの感じはありませんでした。


次に出てきたサイン、それこそが以前から気になっていた消化器である「脾」の問題でした。

「脾」の臓が病むと、水分代謝に問題が生じます。

湿邪と呼ばれる水の影響で、メニエール病に似た「めまいの症状」が出ることがあります。

多くの場合、頚椎の並びに歪みが生じており、これが整うことで症状が改善します。

頚椎の歪みと脾の臓が関係しているということです。

飲食の状況をさらに細かく問診しました。

練習中の捕食は、コーンスープやカボチャのスープ、たまにお汁粉もあるそうです。

どれもお母さんの手作りで、冷え切った身体を温めるためにも効果的です。

お汁粉の場合、少し糖質の取りすぎになっていないか気にもなりましたが、運動量からみてもそれほど問題があるとは思えない内容でした。

普段の食事もきちんと管理されていて、間食で菓子類を食べることはないようです。

脾に影響を及ぼすような飲食の問題は見当たりませんでした。


問診しながら「脾の調整」が終わると、頚椎の歪みはきれいになくなりました。

もう一度、ふらつきがでるかどうか見てもらったのですが、驚いたことに、見事にふらつきが消失し、首を左右に動かして周りの景色が素早く移り変わっても、ふらつきの問題はおこりませんでした。

どうやら原因は水邪に間違いないようです。

脈診と診断、治療を繰り返すことで、水邪がふらつきと関係していることが判明し、湿(水邪)と関係する臓腑、「脾」を治療すればふらつきが改善するところまでは明らかになりました。

ようやく、ふらつきの原因と治療方針にたどりつけたので、ひとまず安心できました。


次につづく

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