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小島 秀輝

霍乱の治療 【漢方編】


霍乱については、後漢時代の書、黄帝内経の中に見ることができます。

後漢は25年から220年ですから、中国ではかなり早くから霍乱の治療をしていたことになります。

後漢末期の200年頃には、張仲景の書、傷寒論が完成し、その中で「弁霍乱病脈証并治」として、さらに詳しい診断と治療方法が展開されます。


傷寒論は、何らかの邪気に感染した身体の状態を太陽、陽明、少陽、太陰、少陰、厥陰の6種類(六経)に分類することで、病気を発症してから発展していく過程を正確に分析し、病の原因を明らかにして、診断と治療に活用することを可能にしました。

単に病気を特定するのではなく、患者の病邪に抵抗する生命力の強弱、病気の勢いの盛衰や緩急などを四診によって分析できるところが優れています。

そんな傷寒論において、霍乱は厥陰病に分類されます。

「厥」には、「極まる」という意味があります。

厥陰は、傷寒六経病証の最後の段階であり、三陰経の最後でもあります。

黄帝内経では、「両陰交尽きる、故に厥陰と曰う」

傷寒論では、「陰陽の気、相順接せず、すなわち厥を為す」とあります。

両陰とは、陰中の陰、陽中の陰のことで、陰と陽のことを意味します。

陰気と陽気が交流しなくなった状態が「厥」ということを述べています。

具体的な身体状態を説明すると、上半身が熱くて、下半身が冷えることや、ひたすら寒いとか、ひたすら熱いなど、陰陽の一方が欠けて不足していることです。

陰陽の順接を失うと調和が無くなり、恒常性が著しく失われて、健全な生命の営みができない、とても危険な状態になっていることを意味しています。


それでは、なぜ、霍乱が厥陰病に位置しているのか。

「霍」には、急な状態という意味があり、病の勢いが激しいことを連想させます。

実際、霍乱の症状は、嘔吐と下痢を何回も繰り返すので、身体に多大な負担があります。

さらに、悪寒があったり、発熱したり、頭痛や身体疼痛もあったりします。

もしも発汗がひどい場合、身体を温める陽気を失うことになり、手足を温養することができなくなって、四肢厥冷という状態を引き起こします。

この段階の発熱は、発汗によってぬくもりが体内から漏れていく熱であり、冷えによって追い出されている状態です。

その結果、身体はさらに冷え、生命力は低下し、死へと近づいていきます。

まさに陰が極まって、仮熱(一見すると熱のようであるが、深部は冷えている)が生じています。

このように、霍乱には「厥」の状態が生じるため、厥陰病に分類されているのです。


そんな霍乱をどのように治療するのか。

その代表的なものに「四逆加人参湯」があります。

「四逆湯」は、附子、乾姜、炙甘草の三つの生薬で構成されていて、それに「人参」を加えると四逆加人参湯に成ります。

附子は、身体全体を大きく温めて、元気を取り戻します。

乾姜は、心下を大きく温めて、元気を取り戻し、附子と相まって寒気を取り除きます。

炙甘草は、「霍」の特徴である「急」を鎮めて、身体のこわばりを鎮めます。

人参は、元気を取り戻し、身体全体に潤いをもたらします。

生薬の役割を見ると、発汗、嘔吐、下痢などによって失われた生命力を取り戻す内容になっていることがわかります。

生命力が低下すると、我々の身体は陽気を失っていきます。

陽気は邪気と闘うのにとても重要ですが、それが衰微した状態ということです。

六経の最終段階の厥陰に至ると、陽気と陰気が交わることができなくなるので、命が消えようとする症状が身体に現れます。

それが「四肢厥冷」です。

漢方薬の生薬は、ひとつひとつに明確な役割があることが分かっていただけると思います。


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