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食べ物の行方 (下)


シェーンハイマーは、重窒素を使った動物実験で、さらなる試みをしました。

それは、投与された重窒素アミノ酸が、身体のたんぱく質中の同一種のアミノ酸と入れ替わるのかどうかを確かめることでした。 つまり、餌に含ませたアミノ酸のロイシンが、体内のロイシンと置き換わったどうかを調べたのです。

まずネズミの組織のたんぱく質を回収し、それを加水分解してバラバラのアミノ酸にします。 性質の差によって20種類のアミノ酸に分別し、質量分析計にかけて、各アミノ酸それぞれに重窒素が含まれているのか解析してみました。 実験後、ネズミの体内のロイシンには重窒素がもちろん含まれていました。

さらに判明したことは、他のアミノ酸であるグリシン、チロシン、グルタミン酸などにも重窒素が含まれてることです。 つまり重窒素を含むアミノ酸は、ロイシンだけではなかったということになります。 体内に取り込まれたアミノ酸は、さらに細かく分子レベルまで分解されて、その後改めて再分配され、各アミノ酸を再構成するに至り、各組織のたんぱく質へと組み上げられたのでした。 このことからはっきりわかったことがあります。 それは、絶え間なく分解されて入れ替わっているものは、アミノ酸よりも下位レベルである分子レベルであるということです。 私たちは、皮膚や髪の毛、つめなどが絶えず新生し、古いものと入れ替わっていることを実感しています。 ところが実感のない体内の臓器や、一見、固定的に見える歯や骨ですら、その内部では絶え間ない分解と合成が繰り返されているのです。 わたしたちが「自己」と認識しているものには、「流れ」そのものしか存在しないことになるのです。 なぜ私たちの身体は、絶え間なく入れ替わることをえらんだのでしょうか? 第一に、常に合成と分解を繰り返すことによって、傷ついたたんぱく質や、変性したたんぱく質を取り除き、これらが体内に留まることを防ぐことができるからです。 第二に、合成の途中でミスが生じた場合でも、素早く修正することができるからです。 これらの理由によって、非効率的で、消費的にみえる合成と分解を繰り返し、不要なものを排出し、常に「自己」を修復することで、生命という秩序を保っているのであります。 このことから、体内で行われる「流れ」に逆らうことなく、一定のバランスを保つようにコントロールすることが、健康において重要であると思います。