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  • 小島 秀輝

風邪の治療例 「鼻水」後編


Sさんは対処療法に頼る傾向が強く、頭痛、発熱、便秘、関節痛、血圧、血糖値など、たくさんの薬を飲まれます。 普段、体温が35度台しかないところ、38度まで発熱できたことは喜ばしいことで、風邪を治すためには必要な作用です。 詳しく聞いてみると、みぞおちが痛んだときは悪寒がひどくて、カイロをたくさん張っても温もらなかったようです。 激しい悪寒と38度を超える発熱があり、みぞおちが痛んだということが問診にてようやく判明しました。 四診の一つである切診には、腹部で診断する腹診があります。 その腹診では、みぞおちの緊張は、頭部や頚の病気を意味することがあります。 今回、頚の後ろに感じた悪寒の影響で、みぞおちに痛みが出た可能性が否定できない状況です。 これらのことを総合的に考えて、一番整合性の高いことを「証」として導きます。 発熱時、みぞおちが緊張しているときに体表観察ができていないため、決定的な証拠にできないのが残念ですが、問診だけの「証」としては、今回のみぞおちの痛みの原因は風邪と関係があるとして良さそうと判断しました。 今回のおばあちゃんの風邪の移り変わりをまとめると、 風邪を引いていたいたSさんは、午前中の鍼灸治療では完全に風邪を治癒することができず、夕方から悪寒と発熱を感じるようになりました。

その頃にみぞおちあたりに痛みを感じて、胃の痛みと勘違いするほどでした。

幸い、二日後には熱も平熱に戻っており、鼻水と痰がたくさん出て、喉がガラガラとして、声が出にくい状態がつづいていました。 さらにそれぞれの症状に解説を加えますと、鼻水と痰は残っていましたが、すでに悪寒のある状態ではありません。 これは発熱が効果があったと思われます。 この発熱が38度を超えない場合、回復が遅れることが多いように思います。 低体温の方が風邪の回復までに時間がかかる理由の一つであると考えています。 鼻水と痰は、水分代謝と関係があり、食事との関係を考慮する必要があります。 以前から消化器に問題が出やすいSさんでしたが、今回は久しぶりにはっきりとツボと脈に反応が出ていました。 のど飴をよく口に入れていたようなので、不要な栄養分が痰となって溢れ出たのだと判断しています。 鍼灸治療で消化器の調整をしたのち、すぐに鼻水と痰が減少したことからも間違いないと思います。 風邪は日常的に見られる症状ですが、その状態はいろいろとあり、常に一定であることは少なく、千変万化するため、的確に状態を把握することが大切なのです。

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