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ウイルスと免疫の攻防 (上)


インフルエンザウイルスの流行には、渡り鳥が深く関係していると言われており、人間以外にも、豚や鳥に感染します。 ウイルスは空気中に存在するため、完全に除去することはとても不可能です。 そのためウイルスの脅威に常に怯えてしまうことになります。 未だにワクチンを求める方が多いのは、このあたりに理由があるのでしょう。 外部からの感染源にだけ目を向ければ、確かに感染は避けられないように思います。

ところが感染の脅威にさらされていても、実際にはなかなか症状を発症していない現実があります。 その理由は、私たち身体の内部には恒常性が備わっていて、その中でも免疫力が中心となって、感染に対して威力を発揮している防衛システムがあるからです。 感染と免疫システムを学ぶことは、自らの健康を守るためにとても大切なことです。

毎年のように騒がれるインフルエンザも、風邪を引き起こすウイルスに過ぎません。 日常、私たちが感染に気付くのは、寒気、だるさ、熱っぽい、喉の痛みや鼻水が出るなど、何らかの症状が出てからです。 これら自覚症状が出た段階は、感染のプロセスから見ると、相当に感染が進んでいることになります。 インフルエンザの場合、潜伏期間が数日あり、感染中であってもその間は何も症状が出ることはありません。 ウイルスが体内の感染部位において無数に増殖することで、初めて症状があらわらることになります。 感染の成立と発病するかどうかは、潜伏期間における免疫システムの複雑なプロセスによって決まることになるのです。 免疫システムはとても複雑でわからないところも多いのですが、現在の科学でわかる範囲のことを知っておくことが、感染症への知識として大切であると思います。

効果の期待できないワクチンが必要かどうかを考えるためにも参考になると思います。

それでは、インフルエンザと免疫システムとの闘いを時間を追うことで、身体の防衛機能を見てみたいと思います。 空気中に漂うインフルエンザウイルスは、呼吸の際にノドに侵入します。 私たちの口腔内には常に唾液が流れているので、侵入したウイルスの大半は唾液とともに胃へと押し流されることになります。 インフルエンザウイルスは、胃や腸の中では増殖できないため、安全です。 問題になるのは、ノドの上部や、鼻の粘膜に取り付いたウイルスです。 彼らには、粘膜細胞に取りつくためのスパイクがあります。 粘膜に取り付いたウイルスを最初に迎撃するのが、IgAです。 粘膜に多く含まれていて、ウイルスに接着し、ウイルスの活性を奪います。 粘膜の細胞に侵入できなくなくなったウイルスには、もはや増殖することが不可能となり、人体に無害なものとなります。 このようにして、第一段階において、ウイルスの感染を阻止することになります。

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