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  • 大阪本町鍼灸 和鍼治療院

慢性病と冷え性 後編


私が現在も治療をしているTさんは、化学薬品を長期に渡って使用し、複数の病気を併発するようになった女性です。

20代で妊娠し、妊娠中毒で気を失い、帝王切開で双子を出産されます。

30代でパーキンソン病を発症し、数年後にリウマチ、喘息、慢性腰痛、五十肩、緑内障アトピー性皮膚炎と複数の病を持病として抱え込むことになりました。

それらのどの症状に対しても医師の診断による化学薬品を服用し、私が治療を始めた頃は60才を超えておられました。

初診で身体を見たときは、70代後半に見えるほどに年老いて見えました。

当時は湿布薬を相当の量、使用しており、常に湿布の臭いが周囲に漂っていたことを覚えています。

緑内障はパーキンソン病の薬による副作用であることが医師の診断で明らかになっています。

そのため、緑内障の処方箋は変更になりましたが、今も目薬は使用しなければいけない状況です。

当時はリウマチと喘息の薬もきちんと服用されていたので、身体の芯まで冷えきっているような状態だったと思います。

治療をはじめてから2年が経過した頃には、喘息症状が消失し、リウマチによる指の痛みもかなり軽減でるようになっていました。

化学薬品への依存と期待が高かったのですが、鍼灸治療によってあらゆる症状が緩和したことで、薬を止める意思をもてるようになられました。

その結果、化学薬品の使用は、緑内障の治療薬のみとなりました。

鍼灸による治療効果が確認できるようになったことで、鍼灸治療で体質改善を行うことの意味をようやく理解してもらえるようになりました。

鍼灸治療はすべての病を快方へと向けることができるので、Tさんにもようやくそのことを実感してもらえたようです。

この頃になると、表情が明るくなり、肌のくすみが嘘のように消え、美白とも言えるくらいに肌質が良くなっていきました。

現在は後期高齢者の仲間入りをされていますが、どの症状も軽減していて、悪化することもほとんどなくなっています。

Tさんの臨床経験は、私にとっても非常に貴重なもとなっています。

「病気のデパート」と呼んで良いくらいに、多種多様な症状をお持ちのTさんですが、東洋医学による鍼灸治療を継続したことで、すべての症状が改善できています。

病となっている原因はひとつではありませんでしたが、そのいくつは克服できるようになっていて、アトピー性皮膚炎、喘息、腰痛は解消されています。

東洋医学には「異病同治」と言葉があります。

「異なる症状を同じ治療方法で治すこと」を意味していて、一つ一つの症状に振り回されることがなく、着実に体質が変わっていくことを実感してもらえる治療です。

その証拠に、治療開始当初は4,5回もあった夜間尿が、現在は1,2回に減少しています。

特に驚いたのは、真冬の寒い時期であっても、夜間にトイレに行くことが1回程度の時があることです。

Tさんの治療において、「冷え性」を意識して行った期間は、初診から2年間程度です。

その後は灸を控え、鍼を中心とした治療を継続しています。

冷え性であれば、外部からのホットパックや遠赤外線などの温刺激が必要であると思うのが通常ですが、鍼灸治療では必ずしも必要ではないことがわかります。

慢性疾患を抱えている患者さんのほとんどは冷え性や低体温の人です。

そのため「温めることが良い」ことは明白なのですが、それだけでは体質が改善出来ていないこともあることに気づくことができました。

カイロや電気毛布を使用する人を多く診てきましたが、体質改善できた人を見たことはありません。

むしろ悪い状態が継続するため、「冷える」ことにかなり神経質になっておられます。

くつ下を二重、三重に履いてみたり、風呂から上がるとすぐに冷えたりと苦心が絶えないようです。

このような患者さんでも、しばらく鍼灸治療を続けていると、足の指先が冷えなくなり、風呂上がりもいつまでもポカポカするようになっていきます。

治療途中から変化が現れて、治療終了時には身体全体がお風呂上がりのように温もるようになっていきます。

治療開始当初、このように温もることを感じることができない人もおられますが、徐々に下腹部から腰付近が温もることを感じるようになっていかれます。

それがへそを中心として、手足の末端まで温もりが広がるようになっていくのです。

治療を継続している人で、これを実感できない人は一人もおられません。

全身まで温もるようになる頃には、多種多様な症状にも変化があり、機能障害が減少しているので、生活のQOLがかなり向上しています。

多くの方が同じように変化していく様子を見ることで、『「慢性病」と「冷え性」との間にはどうやら関係性がある』と思うようになりました。

消炎鎮痛剤やステロイドが体質に悪影響を与えることは先に述べたとおりです。

それとは別に、多くの患者さんを苦しめている「冷え性」を考えることは非常に有意義なことだと思います。

そこで、多くの著書がある安保徹先生や石原結實先生の考え方を参考に、「冷え性」について深く検証をしていきます。

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