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  • 和鍼治療院 小島秀輝

朋あり遠方より来る


30年前の夏、二人は土のグランドでアメリカンフットボールに打ち込んでいました。

そのグランドは今はすでになく、チームマーク入りの人工芝へと場所を移しています。

当時、私がオフェンスライン、彼はランニングバック。

私の仕事は、ディフェンスラインの厚い壁をこじ開け、彼が走る道を作ることでした。

大学を卒業しチームを離れてからは、チームメイトの結婚式や同窓会で再開する機会しか私自身にはなく、チームの試合会場で再開する機会がほとんど無くなっていました。

今春、同じラインメンのチームメイトが関西勤務になった折、久々に関西在住の同期生で会うことになりました。

この時、Hくんとも久しぶりに再開し、今も現役でアメリカンフットボールをしていることも知りました。

チームを代表するランニングバックでしたので、彼の現在の活躍にとても興味を覚えました。

その時、そんな彼から健康面での相談を受けることになります。

数年前から「めまい」が出るようになり、なかなか改善しないとのこと。

お互い50歳が目前となりつつあるので、何かしら病気が出てくるものだと思いました。

この時点では、身体をきちんと診断できなかったので正確な原因はわかりませんでしたが、彼の生活習慣を聞いてみて、お酒が原因かもしれないとアドバイスをしました。

Hくんも思い当たる節があり、その話に妙に納得してくれました。

「近々、治療院に行くから治療よろしく」ということで、この日は別れました。

それからしばらくして、「めまいが再発したので治療して欲しい」との電話があり、早速、治療することになりました。

治療室でひとつひとつ丁寧に身体を調べてみると、仕事のストレスや疲労が身体には影響していることがわかりました。

しかしながら、その日の治療内容から、「めまい」の原因として一番影響しているのは「お酒」であることが判明できました。

この結果は、同窓会の時に予想していたとおりだったので、「お酒の量を控えるように」とだけ養生指導をするに留まりました。

それ以降、治療の依頼もなく、体調が気になっていたのですが、今週、久しぶりに彼から電話がありました。

仕事の休暇中で、北海道に居るとのこと。

休暇前にお酒を飲む機会が多かったせいか、また「めまい」のような症状が出ているとのことでした。

今回は、「頭の中がモヤモヤする」そうで、仕事休みのようなリラックスしているときに多い現象のようでした。

電話での内容では、前回との症状が少し違う気がしたので、慎重に診断しないといけない予感がしていました。

そして昨日、旅行帰りの途中、Hくんは治療院に現れました。

この時、前回の治療後の状態を聞いたところ、あの治療以降は体調が良くなり、めまいはなかったとのことでした。

それなのに、旅行中に「めまい」が再発したので驚いているようでした。

今年の夏が異常な暑さであることは誰もが知るところです。

現在診ている患者さんの中には、猛暑の影響で体力が低下したり、暑気の影響で体調を崩して食欲がなくなったり、普段の症状が悪化したりしている人が数名おられます。

特に注意が必要なケースでは、熱中症のような症状で、心臓がバクバクする人もいます。

実は、彼を見た瞬間、ひょっとしたら、彼も軽い熱中症ではないかと軽く疑いを持っていたのですが、彼の旅行先は北海道で、本土よりも10度ほど気温が低い状況です。

太陽の光を浴びすぎていないか、日射病の可能性にも触れましたが、あまり実感がない様子。

問診ではいよいよ「お手あげ」となり、Hくんの身体に原因を聞くことにしました。

治療を始めてすぐに判ったことがあります。

それは、前回の治療には無かった「内熱」が、今回はしっかりと確認できたことです。

「暑気」の影響があることを確認できたことにより、やはり「熱中症」の可能性が高まりました。

内熱を取り除く治療を施し、「頭の中に感じるモヤモヤ」の変化を観察してもらいました。

すると、しばらくしたらモヤモヤが薄れてきたようで、この施術だけで、気になっていた症状がほとんど消失してしまいました。

これにより、めまいの原因が「暑気」であることは間違いないようですが、涼しいはずの北海道で発症した理由が未解決のままです。

それでいろいろと他の可能性を探ってみたところ、「宿泊のホテルで温泉に長時間、数回、入っていたこと」を聞き出すことができました。

いわゆる「湯中り」のようなものが原因かもしれません。

この日の治療でも、お酒の影響を取り除くことをしていますが、この治療で症状が変化することはありませんでした。

治療内容と問診の結果を照らし合わせてみると、「頭がモヤモヤするめまい」の原因は、太陽光のあたりすぎと温泉の入浴が原因であると診断しました。

このように、同一人物で、同じような症状が出たとしても、病の原因が異なることがあります。

このことを「同病異治」と東洋医学では呼んでいます。

猛暑の中、共に同じ目標に向かって汗を流した友人、そんな彼の治療を任せてもらえることに感謝です。

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