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大阪本町 和鍼治療院 小島秀輝

涙の理由 (上)


「病を治癒へと導くこと」が和鍼治療院の医療としての目的です。

「治」と「癒」には、少し意味合いがことなるところがあることをブログで紹介しました。

「癒」には、「治」という語源にはない、全体性・全人生という意味が含まれています。

現代医学は、肉体にのみにアプローチする医学という「負」の一面を持っています。

肉体の症状を緩和することができても、病を癒すことはできません。

私たちは、「体・心・霊性」という三つの要素から成り立つ生命体であるという考え方(ホリスティック医学)が世界で広がりつつあります。

医療とは、身体的苦痛だけでなく、心と霊性をも癒すものとなる必要性が求められています。

今回、紹介するHさんは70代後半の女性です。

昨年の10月、あるケアセンターでお会いした時、Hさんは松葉杖をつき、小さな歩幅で歩くのがやっとのようでした。

その場では運動療法のみを施術したのですが、これが非常に効果的であったようで、次にお会いしたときにとても感謝してもらいました。

運動療法よりももっと効果的な治療法があることをお伝えすると、鍼灸治療にとても興味を持ってくださいました。

そして今年に入り、ようやく鍼灸治療を受けてもらえる環境が整いました。

Hさんは3年前に盲腸炎を発症しました。

しかし、最初に入院した病院では原因が究明されることはなく、4日後に移動になった病院での検査で腹膜炎を起し、生命の危機に瀕していることが判明します。

手術は無事に成功し、一命を取り留めることができました。

ところが、手術後から歩行が困難となり、一人で移動することがとても不自由になりました。

医師からは手術しても治る見込みが低いと言われ、リハビリに専念することを薦められました。

医師は病名をはっきりと言わなかったそうですが、Hさんの姿勢や歩行状態から診断すると、「脊柱管狭窄症」を発症していることが予想できます。

それ以降は、年に一度の町内会の旅行に参加できなくなりました。

ご主人と登山を楽しんでいたほど健脚でしたが、家から外出することもできません。

自宅では、料理を立ってすることができなくなり、材料を刻んだり、食材を炒めたりすることもすべて、椅子に座りながらです。

寝床から立ち上がる動作は、壁をつたうことや何かを持たなければ立てなくなりました。

30代はママさんバレーで活躍してそうですが、ボールを投げることもできません。

太腿から下肢が浮腫むようになり、足首が冷えるようになりました。

尿の出が悪くなり、何回もトイレに行くようになり、夜間尿も2回ほどあります。

便秘しやすくなり、逆流性胃炎の症状もあります。

腹膜炎とその手術によって、Hさんは多くの運動機能を失います。

そして消化機能や排泄機能にも機能低下が顕著に出るようになりました。

つづく

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