森の役割


森林には、大規模な「葉の集合体」があります。 一平方メートルの林冠には、二七平方メートルの葉が広がっています。 そこに雨が引っかかり、再び水分が蒸発します。 それとは別に、夏場になると樹木の呼吸が盛んになります。 これにより、一平方メートルあたり二千五百立方メートル、つまり二千五百トンにもなる水分が土壌から吸い上げられ、空気中に放たれます。 これらの蒸気によって雲が作られ、風によって大陸の内部に運ばれ、雨となって降り注ぎます。 それが繰り返されることで、沿岸から遠く離れた地域も乾燥することなく、生命活動に最適な環境が保たれてきたのです。 アマゾンの熱帯雨林には海岸から数千キロも離れた地域がありますが、海岸沿いと同じくらいの雨量があるそうです。 樹木が集合体となって森を形成し、海岸から内陸地まで森林が続くことで、空気中に優れた水の通路が出来上がることがわかります。 この森のポンプの仕組みで、山間部や大地に雨が降り、森林に蓄えられた水が地下水となり、地表に現れて湖や川となって、その周囲の生態系を維持しています。

この仕組みにもっとも大切なことは、海岸付近の森林の存在です。 海岸から数珠繋ぎのように森林が無いと、このポンプと水の通路は完成しないのです。

かつて文明が栄えた場所が砂漠となり、砂の下に埋もれてしまったところまであると聞きます。 水の都と呼ばれたシルクロードの要所でも、水が枯渇し、歴史からも消滅した都があります。 私は森林のポンプ作用を知った際、忽然と水が消えた古代都市の秘密が解けた気がしました。 都には世界から多くの人々が集まります。 人口増加に伴い、たくさんの建造物が建設されます。 石を並べて建造した遺跡も多く存在しますが、やはり多くの木材が必要だったことは想像に難くありません。 都の周囲の森林は伐採が進み、居住区と農地へと変貌したのではないでしょうか。 森のポンプと水道には、森林が数珠繋ぎとなっている必要があります。 東アジアの乾燥地帯をみれば、海岸の沿岸部には森林が無いように思います。 巨大なビルやソーラーパネルを建設することも大切かもしれませんが、植林を推進し、森林を育成することが大切ではないでしょうか。


日本人はかつて、次の世代のために植林をしてきました。

私たちにとって、木材が家であり、家具であり、燃料だったからです。

気を育てるのに50年はかかるそうです。

今こそ、今よりも未来を考えた先人の知恵と想いの継承が必要です。

森のポンプと水道、豊かな日本と、それを残してくれた先人に感謝です。