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寒露

  • 10月6日
  • 読了時間: 3分
和鍼治療院
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寒露 ― 露が冷たく、霧が立つ 気の変わり目に心と体を整える

10月8日頃、二十四節気の「寒露(かんろ)」を迎えます。露が冷気によって冷たくなり、凍りそうになる――この言葉が示すように、秋は深まり、朝晩の冷えが一段と厳しくなる頃です。空は高く澄み、虫の音は遠く、自然界が静けさを取り戻していく時季です。

興味深いのは、秋分を挟んで「白露」「寒露」と、二度続けて“露”の字が現れること。これは偶然ではなく、天地の気が陽から陰へと移り変わる過程を表しています。白露は、夏の名残の中に陰の気が初めて現れるとき。草葉に宿る露が白く光り、まだ温もりを残しながらも、季節の気配は確実に変わり始めます。一方、寒露は陰気が増し、露が冷たさを帯びて、陽の気が奥に収まる節。自然界の呼吸が外向きから内向きへと転ずる、陰陽転化の要所なのです。

そしてこの頃、早朝には「霧」も立ちこめます。霧は、夜間に冷えた空気が地上の水蒸気を含みすぎて、微細な水滴となって空中に漂う現象。つまり露が地に降りた姿なら、霧は空に浮かぶ“露”といえます。露は「陰が地に降りて静まる姿」、霧は「陽中の陰が空に漂う姿」。この曖昧な状態は、まさに陰と陽の境目を示しており、天地の気が調和する瞬間でもあります。

日中と夜の温度差が大きいほど、露や霧が発生しやすくなります。これは、陽気が日中に上り、夜に地へ降りていく――自然の「呼吸」が健やかに働いている証。一方、人の体も同じように昼夜で気が巡り、外から内へと動いています。しかし現代の生活では、この自然のリズムが乱れがち。夜更かしや冷たい飲食が続くと、陰陽の転化がうまくいかず、体調を崩しやすくなります。

寒露の頃に起こりやすいのは、喉の乾き、咳、肌荒れ、関節痛、腰の冷えなど。これは秋の主気である「燥」に、夜の冷えが加わるためです。東洋医学では「肺は燥を嫌う」とされ、乾きや冷えによって肺気が弱ると、免疫力が低下しやすくなります。潤いを補う食材――れんこん、白ごま、梨、はちみつ、山芋など――を積極的にとりましょう。特にれんこんは、肺を潤し咳を鎮める代表的な食材です。

また、朝晩の冷え込みが増す今こそ「下半身の温め」が重要です。足首や腰を冷やさず、夜は軽い足湯を習慣に。冷えは気血の滞りを生み、腰痛や月経痛、胃腸の不調を引き起こします。鍼灸では、肺と脾を整える「太淵」「列欠」「足三里」などの経穴を用い、乾燥と冷えに備える調整を行います。これにより、体の中心から温まり、巡りが整っていきます。

霧が立ち、露が冷たくなるこの季節は、自然界が私たちに“静かに整う”ことを教えてくれています。秋は五行で「金」に属し、情は「悲」。外に向かっていた気を収め、内なる充実を育む時。陽が昇れば霧が消えるように、焦りや迷いも、呼吸とともに静まっていきます。

天地の気が結び、水が露となり、霧となって漂う――この現象は、まさに自然が呼吸している姿。寒露の頃は、その呼吸に寄り添い、ゆっくりと自らの内側へ帰っていく季節なのです。

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