白露
- 9月3日
- 読了時間: 3分

✿ 白露(はくろ) — 秋の入口の節気
暦の上で処暑も末候に入り、まだ暑さの名残が強く、体温を超えるような日が続いています。畑に目をやれば赤とんぼが群れをなして飛び交い、夕刻の涼風に秋の気配を感じる頃となりました。ふと、大学時代のグラウンドで夕方に見た光景がよみがえり、自然の移ろいが人の記憶に重なるのを思います。
やがて迎えるのが二十四節気第十五「白露(はくろ)」です。2025年は9月8日から22日頃までにあたり、文字通り草木に朝露が結ぶ頃を指します。昼間はまだ残暑の厳しさが残るものの、朝夕の空気は冷たさを帯び、空は澄み渡り、秋の星座が鮮やかに姿を現します。農村では稲穂が黄金色に色づき始め、収穫の兆しを伝える季節です。
白露の特徴は昼夜の寒暖差。朝晩の冷え込みと日中の暑さが交互に訪れるため、体温調節が難しくなります。空気も乾き始め、喉の渇きや咳、肌のかさつきといった「燥」の症状が現れやすくなります。さらに、急な冷えや乾燥によって気血の巡りが滞り、ふらつきや腰痛といった不調を訴える方も増えてきます。特に腰痛は、夏の疲れが残った状態で冷えが入り込むことで、腎の働きが弱まりやすいことと関連しています。
東洋医学では、秋は五行の「金」に属し、肺・大腸に影響を及ぼすとされます。気候の乾燥が肺を傷つけると、咳や喉の痛み、便秘や皮膚症状が増えるのはこのためです。また気の巡りが上逆すればのぼせや呼吸の乱れが起こり、下半身の気血が不足するとふらつきや腰痛が出やすくなります。診療でも最近は「気逆(きぎゃく)」を主訴に来られる方が多く、全身のバランスを取り戻すことが大切です。
この時期の養生の要は「潤す」こと。衣服で冷えを防ぎながら、肺を潤す食材を積極的に取り入れるとよいでしょう。梨やぶどう、柿、りんごといった果物、れんこん、百合根、白きくらげなどの野菜や根菜、はと麦や小豆といった穀類はおすすめです。蜂蜜や白湯、薄めの果汁も潤いを補い、乾燥を和らげます。反対に、唐辛子や揚げ物など辛味や乾燥を助長する食材は控えめにすると良いでしょう。
また、秋分まではまだ残暑が続くため、冷たいものを避けつつも体を冷やしすぎない工夫が必要です。軽い散歩や深呼吸を取り入れることで、肺の機能を高め、気の流れを整えられます。腰痛を感じる方は、下肢を温めながらのストレッチや軽い運動も効果的です。
和鍼治療院では、この季節特有の体調不良に対して、経絡の巡りを調え、肺や大腸を潤す鍼灸治療を行っています。喉の不調や咳、便秘、肌の乾燥に加え、ふらつきや腰痛といった秋の入口ならではの症状を感じている方は、早めに身体を整えることで季節を健やかに乗り越えられるでしょう。
白露は、夏から秋への大きな転換点。自然界の変化に合わせて心身の調和を図り、潤いを保ちながら秋を迎えることが、健やかな養生につながります。




コメント