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処暑

  • 8月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:9月3日

東洋医学の和鍼治療院
東洋医学の和鍼治療院

〜暑さを収め、秋への扉を開く〜

処暑は二十四節気の第十四。文字通り「暑さが止まる」と書き、暦の上では暑さの峠を越えたことを告げます。令和七年の処暑は八月二十三日。太陽が黄経百五十度に達したとき、この節気に入ります。しかし、現代の夏は容易に手を緩めてはくれません。昼間はまだ強烈な日差しが降り注ぎ、アスファルトの照り返しが肌を刺すようです。それでも、早朝や夜更けにはふと涼やかな風が通り抜け、季節の移ろいを知らせてくれます。

東洋医学では、この時期は「陰陽転化」の一つの節目とされます。陽気は頂点を過ぎ、少しずつ収まりを見せ、陰気が静かに勢力を広げ始めます。自然界では稲の穂が色づき、虫の声が夜を彩り、空の青さがわずかに深まっていきます。身体もまた、この変化に呼応して内側へとエネルギーを収めていく準備を始めます。ところが現代人は、この自然のリズムに追随することが難しくなっています。冷房の効いた部屋と炎天下の往復、冷たい飲食物の過剰摂取、夜更かしや過密なスケジュール…。こうした生活習慣は、陰陽のバランスを乱し、体調不良の芽を育ててしまうのです。

処暑のころに多く見られる不調は、「夏の疲れ」の残滓です。倦怠感、食欲不振、胃もたれ、下痢や便秘、あるいは朝晩の涼しさによる冷え症状。これらは脾胃(消化器系)の機能低下や、自律神経の乱れによって引き起こされます。東洋医学では、脾胃の働きが弱まれば全身の気血の生成が滞り、免疫力の低下や情緒の不安定さにもつながると考えます。つまり、処暑は“秋に向けての基礎体力”を整えるための大切な関所なのです。

和鍼治療院では、この時期特有の症状に合わせて施術を行います。例えば、脾胃を温めて働きを促す足三里や中脘、冷えによる不調には三陰交や関元などを選びます。また、自律神経のバランスを整えるために、背部兪穴や百会などのツボを組み合わせ、全身の巡りを回復させます。施術後は体がじんわりと温まり、呼吸が深くなる感覚を実感される方が多いのも、この時期の特徴です。

さらに、この季節は「未病」への対応が非常に有効です。症状がはっきり現れる前に手を打つことで、秋から冬にかけての感染症やアレルギーの発症リスクを減らすことができます。特に朝晩の気温差に弱い方、胃腸の調子を崩しやすい方は、処暑の今こそ体を整えるチャンスです。

夜、虫の声を聞きながら秋の気配を感じる時間は、心を静め、呼吸を深める良い機会です。東洋医学の養生では「心静自然涼(心静かにすれば自然と涼し)」という言葉があります。心を落ち着け、自然の変化に耳を傾ければ、身体もまた穏やかに季節を受け入れていきます。

暑さと涼しさの境目に立つ処暑。夏の疲れを癒し、秋の実りへ向けて内なる力を養うこの時期に、鍼灸は静かで確かな後押しとなります。季節の扉が開く今、あなたの身体もまた新たな調和へと踏み出す準備をしてみませんか。

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