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霜降

  • 10月22日
  • 読了時間: 4分
大阪本町の東洋医学鍼灸 和鍼治療院
大阪本町の東洋医学鍼灸 和鍼治療院

霜降 ― 霜が降りる朝、潤いを忘れずに

—— 丙戌の十月、秋の変わり目とごま油の智恵

明日はいよいよ「霜降(そうこう)」を迎えます。二十四節気の第十八、例年10月23日ごろから立冬の前日(11月6日ごろ)までを指し、秋の終盤を告げる節気です。文字どおり、露がさらに冷えて霜となる時季。夜明けには屋根や草葉の先に薄く白い氷の花が咲き、朝日に輝く光景は、季節の移ろいを感じさせてくれます。

今年の10月は、まさにこの「霜降」という言葉の意味を体現した月でした。干支でいうと「丙戌(へいじゅつ)」の月。丙は太陽の火、戌は晩秋の土を表します。火と土が交わると季節は大きく動く——その名のとおり、前半は夏の名残りを引きずる暑さ、後半は一気に冷え込むという激しい気象の転換がありました。大阪でも10月前半は30度近い日が続き、衣替えをためらう陽気でしたが、先週末からの低気圧通過で空気が一変。今週は一気に11月下旬並みの寒さとなり、気温差は10度以上。この落差こそが、まさに丙戌の「火が消えて土に沈む」瞬間を象徴しているようです。

この急な冷え込みの中で、ふと考えたのが「露」と「霜」の違いでした。どちらも夜の冷えから生まれる自然のしずくですが、その成り立ちはまったく異なります。露は、夜気に冷やされた空気中の水蒸気が液体となって葉に宿る“陽の現象”。一方の霜は、空気中の水蒸気がさらに冷えて氷の結晶となる“陰の現象”です。つまり、露は「温かさが残る秋のしるし」、霜は「冷気が支配する冬の兆し」。この二つの間には、わずか数度の温度差しかありません。けれど、その小さな差が、私たちの暮らしや身体の感覚を大きく変えていくのです。

人の体もまた、露から霜へと向かうこの時期、外の冷えに合わせて内を閉じ、温を守ろうとします。皮膚や粘膜は乾きやすく、喉の違和感や肌のつっぱりを感じる方も多いのではないでしょうか。こうした乾燥期の養生として、私が注目しているのが「ごま油」です。

近年、十両優勝で注目を集めた二子山部屋の三田関は、稽古後や遠征の合間にごま油を上手に取り入れていると聞きます。鼻の中や喉に太白ごま油を塗り、乾燥を防ぐというのです。「飛行機内でも3時間は潤いが保てる」と本人が語っており、その言葉には説得力があります。ごま油は、古来アーユルヴェーダでも「生命の油」とされ、日本でも『本草綱目』に肺を潤し、五臓を調える効能が記されています。皮膚や粘膜を保護し、喉や鼻の防御力を高める作用は現代的にも理にかなっています。

実際、寒さと乾燥が同時に進む霜降の頃は、呼吸器系のトラブルが増える時期です。湯上がりに太白ごま油を手のひらで温め、鼻や喉、踵や肘にすり込むだけでも、翌朝の潤いが違います。天然の油膜が体表を守り、風邪や肌荒れの予防に役立つのです。

こうしてみると、三田関の養生法は、まさにこの季節にふさわしい智恵といえます。力士という極限の環境に身を置きながら、自然の摂理に沿って体を整える。その姿は、現代人が忘れかけた「自然に寄り添う生き方」を思い出させてくれます。

霜降は、自然界が「動」から「静」へと転じるとき。冷たく澄んだ空気の中で、地は凍り、木々は葉を落とし、命は静かに根の奥へと力を沈めていきます。けれどこの静けさは、決して終わりではなく、春への準備です。露が霜に変わるように、表の姿を変えながら、生命は確かに次の季節へと息づいているのです。

——明朝、霜が降りるかもしれません。その冷たさを感じながら、三田関のように、鼻に少しごま油を塗って深呼吸してみましょう。乾いた空気の中にも、確かな温もりが感じられるはずです。

和鍼治療院の「秋の潤いケア」

霜降を過ぎる頃、肌や喉の乾き、咳、夜間の冷え、眠りの浅さなど、季節特有の不調が現れやすくなります。和鍼治療院では、肺と腎の気を整え、内側から潤いを補う**「秋の潤いケア」**を行っています。呼吸器の養生・肌の乾燥・冷え症・自律神経の乱れなどに、東洋医学の観点から優しく整える鍼灸を実践しています。

自然の流れに合わせて体を調える——それが最も確かな予防です。朝夕の冷えを感じるこの季節、ご自身の身体にも、少し“潤い”を贈ってみませんか。

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