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立秋と「燥」

  • 8月10日
  • 読了時間: 3分

更新日:9月3日

東洋医学鍼灸の和鍼治療院
東洋医学鍼灸の和鍼治療院

立秋を迎え、連日40度を超えるような猛烈な暑さは徐々に和らいできたものの、前線の影響により湿度が高く蒸し暑さが続く日々が続いています。この季節の変わり目において、私の施術院では興味深い体調の変化が見られました。六日の夕方に、普段は陰虚の調整が必要ない患者さん3名に、陰虚の体質的な特徴が突然現れたのです。翌日もその傾向は持続し、身体の深部に陰が不足している状態が続きました。この時期に見られたこうした現象は、東洋医学の理論を実感できる貴重な機会となりました。

陰虚とは、体の中で「陰」、つまり身体の潤いを保ち、熱を冷ます働きを持つ部分が不足している状態を指します。夏の強い陽気や熱の影響で体内の陰液が消耗されると、熱が身体にこもりやすくなり、のぼせやほてり、口の渇きや睡眠の質の低下といった症状が現れます。実際に今回の患者さんたちも、暑さの影響で体内の陰が守り切れず、陰虚の症状を示したと推察しています。

特に、雨天で湿度が高い状態にもかかわらず陰虚の症状が目立ったのは、夏の長期間の酷暑で体内に熱が蓄積し、陰液の不足が顕著になったためと考えられます。湿度が高いと一見身体が潤っているように感じますが、実際には汗をかきにくくなり、体内の熱がこもるため、陰液はむしろ失われやすくなります。この複合的な環境が陰虚を悪化させたのです。

施術においては、陰虚の調整が必要と判断し、ある重要な経穴への鍼が非常に効果的でした。このツボは体内の陰を補い、腎の機能を助けることで、身体の潤いと熱のバランスを整える役割を担っています。特に右足に施鍼したところ、患者さんの体感としての熱感やほてり、乾燥感が和らぎ、精神的な安定も得られるという大きな改善が認められました。

このことは、陰陽のバランスがいかに身体の健康を左右するかを示すとともに、東洋医学の経絡・ツボ療法の有効性を改めて実感させるものでした。陰陽とは、自然界に存在する二つの相反する要素であり、体内でも互いに補い合いながら調和を保っています。陽が強くなり過ぎると陰が消耗し、陰が不足すれば身体の熱が抑えきれなくなるため、バランスの乱れは様々な不調として現れます。

また、今回の症例は自然の気候と体調が密接に連動していることを示しています。立秋は「秋の気配が立ち始める」節気ですが、実際にはまだまだ夏の名残が強く残り、暑さと湿気が入り混じった体調管理の難しい時期です。古来、東洋医学では季節の変化に応じた養生法を重視し、その時々の気候に最適な調整を心がけることが健康維持の基本とされてきました。

この時期の養生では、身体の陰を保ちつつ過剰な熱を冷ますことが肝要です。具体的には、冷たい飲み物の摂り過ぎは避けつつ、梨や百合根、麦芽などの滋陰作用のある食材を積極的に摂ることが推奨されます。また、夜更かしや過労は陰の消耗を促すため、十分な休息を心がけることも大切です。こうした生活習慣の工夫と、鍼灸による的確な陰陽調整が組み合わされば、暑さに負けない健やかな身体を作ることができます。

和鍼治療院では、立秋以降のこの特有の陰虚傾向に対応した施術プログラムを準備し、患者さん一人ひとりの体質と気候の変化に即した治療を心がけています。身体の内側から自然のリズムに調和することで、日々の不調を軽減し、心身ともに健やかな毎日をサポートいたします。

これから秋へ向けて気温が落ち着き、空気も乾燥に向かいますが、まだまだ身体の陰陽バランスが乱れやすい時期は続きます。自然の声に耳を傾け、日々の養生を怠らず、適切な東洋医学の知恵を取り入れていくことが、健康維持と増進の鍵となるでしょう。

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