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パーキンソン病 【前編】

  • 6月24日
  • 読了時間: 3分

更新日:9月15日


パーキンソン病 Yさん 前編
パーキンソン病 Yさん 前編

再び訪ねてきた理由──深夜2時の生活と、動かなくなった左足

Yさんが初めて当院を訪れたのは、もう10年ほど前のことでした。当時は、重度の花粉症に悩まされていた時期。紹介で訪れた施術が体に合い、鼻の通りや目のかゆみが大きく軽減したことで、「こんなに楽になるのか」と驚かれたのを、私もよく覚えています。

その記憶が心の片隅にあったのでしょう。今回、再び来院されたのは、まったく異なる症状──パーキンソン病による運動障害でした。

発症は約2年前。最初は「左手の動きが鈍い」という違和感から始まりました。それが徐々に左半身へと拡がり、やがて左足が思うように前に出せなくなっていった。日常生活に支障が出るようになるのに、それほど時間はかかりませんでした。

Yさんの生活は非常に忙しく、昼間は本業、夜はアルバイトというダブルワークをこなしています。就寝は深夜2時過ぎ。いわゆる「ゴールデンタイム」と呼ばれる22時〜2時の睡眠時間に身体を休めることができていません。これは単なる“寝不足”ではなく、「修復の機会を奪われ続ける生活」と言い換えることもできるでしょう。

西洋医学の診断により、ドパミン不足によるパーキンソン病と確定され、Yさんは薬を服用することでなんとか仕事を続けてきました。とくに夕方からの勤務に向けて薬を服用すると、両腕を上げられるようになり、動作が一時的に改善されるとのこと。しかし、効果には波があります。仕事がハードな日には、翌朝、身体が鉛のように重く感じられ、「まるで自分の体ではない」と形容されるような状態に。薬が切れたときの落差が大きくなってきているのです。

ご本人も、「薬は効くけれど、これは何か“興奮剤”のような感覚がある」と話されていました。私も同じように感じるところがあります。ドパミンを人工的に補い続けるこの治療法は、一時的に神経の電気信号を刺激し、身体を動かせるようにする。しかしそれは、“本来の動き”ではない。言葉を選ばずに言えば、「麻薬的な作用」に近い印象を受けるのです。

Yさんが当院に再び訪れた理由は、そうした薬の効果と限界、そして“身体そのもの”を見直すためだったのかもしれません。

初診時、全身の気の巡りが鈍く、左側の脈は特に弱く感じられました。舌はやや紫がかり、痰湿の兆候もあり、内側の“流れ”が滞っている状態。全体を診て「肝風内動・腎虚・痰濁阻絡」が複合していると判断し、まずは気血の流通を優先した施術を行いました。

1回目の治療後、「身体がずいぶん軽くなりました」とYさん。歩行の際の足の運びにも改善が見られ、顔色にも明るさが戻りました。長年の緊張が少しずつ緩んでいくような、そんな感触が私にもありました。

もちろん、これはまだ始まりに過ぎません。次回の後編では、Yさんの鍼灸治療がどのように進み、どのような変化が起きていったか──そして、薬とのつきあい方や、東洋医学から見た「治療の本質」について、私の考えを綴っていきたいと思います。


大阪本町 東洋医学鍼灸 和鍼治療院

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