右近の橘と日本在来種・大和橘
- 12月1日
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平安京の紫宸殿には、左右に「左近の桜」と右近の橘が植えられていました。右近の橘は単なる庭木ではなく、宮廷における権力と文化の象徴として非常に重要な存在でした。平安時代、左大臣を中心とする藤原氏と右大臣の菅原氏の間で権力争いがあり、右近の橘は菅原氏の威信を示す位置に植えられ、政治的な象徴として庭園の中でも特別な意味を持っていました。この橘は単なる装飾ではなく、宮廷文化や政治的背景を色濃く反映しているのです。
右近の橘は、日本古来の在来種である大和橘の系統を引くとされます。大和橘は小ぶりながら香りが高く、果実は古代から薬用や儀礼に活用されてきました。常緑であることから不老長寿や永続の象徴とされ、『古事記』や『日本書紀』にもその名を見つけることができます。橘は冬の季節に黄色く色づき、冬至へ向かう陰の気を象徴する植物として、五感を通して自然の移ろいを感じさせる存在でもありました。
橘の歴史と文化的価値を知ることで、現代でもその活用方法を考える手がかりとなります。平安時代の宮廷では、橘の配置や扱いが政治的な象徴であると同時に、季節の変化を楽しむための文化的な要素でもありました。右近の橘の香りは、冬の季節に宮廷人たちが季節を五感で感じ、心身を調整する手段のひとつでもあったと考えられます。
東洋医学の観点でも、橘は冬の養生と深く関わります。橘の香りには気を巡らせ、胸のつかえを和らげる作用があり、乾燥が進む冬に弱りやすい呼吸器や粘膜を守る働きがあります。特に小雪末候の「橘始黄」の頃に橘の香りや色を意識することで、体と心の両方に働きかけ、冬の養生として活用できます。橘の香りを取り入れることで、呼吸器を守りながら季節のリズムに沿った生活を送ることが可能です。
現代では、大和橘は市街地で見かけることが少なくなりました。しかし、保存園や自生地でその姿を確認することができます。橘の果実や香りを日常に取り入れることは、古人の知恵を現代の体調管理に生かす方法でもあります。例えば、橘の果実を料理に少量加える、室内に飾って香りを楽しむ、あるいは漢方的な芳香療法として利用することで、乾燥しやすい冬の季節に呼吸器や粘膜を守る効果を期待できます。
和鍼治療院では、季節の変わり目に体調を崩しやすい方のために、呼吸器や自律神経の調整、冬の乾燥対策を行っています。橘の香りが伝える冬の養生のサインを意識することで、早めのケアが可能になります。鍼灸を用いた季節の養生施術は、体調を整えるだけでなく、心身のバランスを整え、冬を元気に過ごす助けにもなります。
また、橘は古くから薬用としても用いられてきました。果皮や香り成分には、気を巡らせる作用があり、胸のつかえや冷えを和らげる効果があるとされます。こうした知恵を現代の生活に取り入れることで、乾燥が厳しくなる冬の季節に、自然の力を活かした養生が可能になります。橘の香りを意識するだけでも、心身のリズムを整えることができます。
現代においても、橘の果実や香りを取り入れることで、呼吸器や自律神経の調整、乾燥対策など、東洋医学的な養生が実践できます。和鍼治療院では、こうした季節の養生を意識した鍼灸施術を行っており、橘の香りや季節のリズムを意識することで、より効果的な体調管理が可能になります。冬の間も元気に過ごすために、橘の知恵を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。



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