黍餅とおはぎ──雑穀のちから
- 2025年11月13日
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先日、韓国の友人からいただいたおやつがありました。名前は忘れてしまいましたが、もち黍と小豆で作られたもので、日本の「おはぎ」にとてもよく似ていました。甘さは控えめで、もちもちとした食感の中に、穀物の香りとやさしい甘みが広がり、なんともほっとする味わいでした。
黍(きび)は、古くから日本や朝鮮半島で栽培されてきた雑穀のひとつです。稲作が広まる前、人々の主食は米ではなく、黍・粟(あわ)・稗(ひえ)といった雑穀でした。寒さや乾燥に強く、どんな土地でもよく育つため、飢饉のときには命を支えてきた頼もしい穀物です。韓国では今も「기장(キジャン)」と呼ばれ、お粥やお餅として親しまれています。
日本では、お彼岸に「おはぎ」や「ぼたもち」を供える風習があります。もち米と小豆を使ったこのお菓子は、古代の雑穀餅にルーツがあるといわれています。小豆は邪気を祓う赤い豆として、黍は五穀の霊(たましい)を宿す穀物として尊ばれてきました。つまり、おはぎはただの甘味ではなく、「自然の恵みに感謝する神聖な食」だったのです。
韓国の黍餅も、祭りやお供えのときに作られる伝統食です。甘味よりも穀物そのものの香ばしさを大切にし、身体を温める食材として昔から重宝されてきました。陰陽五行の考えでは、黍は「黄色=脾」に属し、脾胃を養って消化を助ける働きがあります。小豆は「赤=心」に通じ、血をめぐらせて水の滞りをさばく作用があります。つまり、黍と小豆を一緒に食べることは、心身を整える理想的な養生法なのです。
白米が主食になってから、雑穀は「昔の食べ物」と思われるようになりましたが、近年は健康志向の高まりで再び注目されています。もち黍には鉄分やマグネシウム、食物繊維が多く含まれ、冷えや貧血、疲れやすい方にもおすすめです。噛むほどに自然の甘みが感じられ、砂糖を使わなくても満足感があります。
韓国の黍餅をいただいたとき、国は違っても「穀物を大切にする心」は同じだと感じました。自然の恵みに感謝し、そのエネルギーを体に取り入れる──それは、古代から人が続けてきた祈りにも似た行いです。おはぎも黍餅も、どちらも「命をいただく」ことを忘れないための食文化なのだと思います。
東洋医学では、「食は命を養うもの」と考えます。季節に合わせて身体を温め、脾胃を整えることが健康の基本です。寒さが深まるこの時期、もち黍や小豆を使った温かいおやつをゆっくり味わってみてはいかがでしょうか。体がぽかぽかと温まり、心までやわらぐように感じるはずです。
和鍼治療院では、東洋医学の視点から「食」と「季節」と「心身の調和」を大切にしています。自然のリズムに寄り添い、体の声を聴きながら、自分らしい健康を育てていく。そんな穏やかな時間を過ごすお手伝いができればと思っています。
おはぎと黍餅──見た目は小さな餅菓子ですが、その中には、自然とともに生きてきた人の知恵と祈りが込められています。古くて新しい雑穀の力を、これからの季節の養生にぜひ取り入れてみてください。



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