季節の変わり目 「ぎっくり腰」
- 9月9日
 - 読了時間: 3分
 

腰が痛い人必見!秋の養生と簡単セルフケア
秋は腰痛が増える季節です。朝晩の冷え込みや夏の疲れで弱った胃腸が、腰の不調を引き起こすことも少なくありません。今回は実際の症例を交えながら、秋の腰痛の原因と予防法、さらにご自宅でできる簡単なセルフケアをご紹介します。
9月に入り、朝晩の空気がひんやりしてきました。季節の変わり目は体調を崩しやすく、特に「腰痛」の相談が増える時期です。ある日の朝、一本のメールが届きました。「主人が腰を痛めて動けません。なんとか往診をお願いできないでしょうか」。急なご依頼でしたが、予定を調整し、初めてのお宅へ伺うことになりました。
玄関のドアは施錠されずに開いており、奥の部屋にはベッドから身動きできないご主人の姿がありました。まさに「ぎっくり腰」です。まず骨盤や股関節の矯正を行うと、少しずつベッド上で体位変換ができるようになりました。背中から腰にかけては筋肉が強く緊張し、呼吸にも力が入っています。診ていくと、秋特有の「気逆」、つまり気の流れが上に逆上している状態が見られました。背部の緊張を解き、気の巡りを整えると、腰の痛みは徐々に和らぎ、動きも軽くなってきました。
しかし問題はそれだけではありません。夏の間に冷たい飲み物やアイスを摂りすぎた影響で、胃腸が弱っている様子がありました。東洋医学では脾胃は全身のエネルギー源であり、筋肉や関節を滋養する役割を担っています。ここが滞れば腰の筋肉に十分な気血が行き届かず、ぎっくり腰の引き金になるのです。そこで胃兪・足三里・三陰交といったツボを用いて胃腸を整えると、残っていた痛みはほとんど消え、自力で立ち上がり歩けるまでに回復されました。ご本人も「これなら明日は仕事に行けそうです」と笑顔を見せてくださったのが印象的でした。
この症例は、秋に多い腰痛の特徴をよく示しています。単なる腰のトラブルではなく、「夏の疲れ」と「胃腸の弱り」が背景にあるのです。秋は涼しさと乾燥が加わり、気の巡りが乱れやすくなります。背筋の緊張や呼吸の浅さを感じる方も増え、そこに夏の冷飲食による胃腸虚弱が重なることで、腰に負担が集中するのです。
東洋医学的アプローチ
鍼灸では局所の痛みだけでなく、内臓の働きや全身の気血の流れを調整します。
胃兪・足三里・三陰交で脾胃を回復させる
大腸兪・腎兪・腰陽関で腰背部をゆるめる
内関・太衝などで気逆を鎮める
こうして「腰」と「内臓」の両面を整えることで、即効的な改善と再発予防の両立が可能となります。
日常でできる秋の腰痛予防
ぎっくり腰を防ぐには、日常の養生が欠かせません。
冷たい飲み物を控え、温かいお茶や常温の水を選ぶ
胃腸を助ける旬の食材(さつまいも、里芋、きのこ類)を積極的に取り入れる
腰やお腹を冷やさず、朝晩は腹巻きや軽い上着で調整する
散歩やストレッチで血流を促し、筋肉のこわばりを防ぐ
疲労を溜め込まず、睡眠をしっかり確保する
まとめ
秋の腰痛は、筋肉や骨格だけでなく、季節の影響や生活習慣が深く関わっています。夏に冷たいものを摂りすぎて胃腸が弱り、そこへ秋の乾燥と気逆が加わると、ぎっくり腰として現れやすくなるのです。鍼灸はその両面に働きかけ、短期間での回復と再発防止を実現します。
季節の変わり目に腰の違和感を覚えたら、我慢せず早めのケアを。腰と胃腸を同時に整えることが、秋を健やかに過ごす秘訣です。




コメント