十二消息卦 (前偏) 白露から立冬──陰の気が深まる季節の息吹
- 11月17日
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更新日:11月21日

季節の気が“陰”へ沈むとき──自然農と易学が教えてくれた冬支度の本質
晩秋の畑に立つと、自然の呼吸が日に日に変わっていくのを肌で感じます。小雪を前にした十七日の朝、足元の土はしっとりと朝露を含み、冬の入り口にもかかわらず思わず立ち止まるほどの潤いを見せていました。植えたばかりの玉ねぎの苗にとっては、まるで大地からの祝福のように感じられます。
その二日前、十五日・十六日には、小春日和を思わせる穏やかな陽気が続きました。雲ひとつない空の下、やわらかい陽光が畑を包み、身体の緊張がふっとほどけるような心地よさ。けれど同時に、乾燥が進み、指先や唇が荒れやすくなる季節でもあります。保湿を心がけなければならないことを思い出させる、季節の変わり目の一瞬です。
この「寒さと乾燥の深まり」と「時折訪れる温かな晴れ間」という二つの現象は、東洋医学や易学の視点で見ると象徴的な意味を持ちます。自然界がそのまま体現している陰の深まり──白露から小雪にかけて進む“陰のプロセス”を私たちは体感しているのです。
白露・寒露・霜降──陰気が目に見え始める時期
二十四節気では、白露を境に季節が大きく陰へと傾きます。朝露が白く見えるほど冷え込み、夜の時間が長くなり、寒露に入ると肌に触れる空気の冷たさが増します。霜降では地表近くの冷気がさらに強まり、霜の気配が漂う時期です。
実際に霜が降りるにはもう少し時間が必要ですが、「霜が降りてもおかしくない空気」を感じる段階がこの時期です。東洋医学でいう「陰気の増大」は、こうした目に見えない冷気や空気の乾きの中に象徴されています。体は自然に陰に引き寄せられ、気は内へと沈み、水分の代謝は少しずつ鈍くなっていきます。
立冬──純陰“坤”の領域に入る
立冬は暦の上で冬の始まりですが、易学で捉えるとさらに深い意味があります。十二消息卦の観点でいえば、この時期は六爻すべてが陰で構成される「坤」に入る段階です。坤は“純陰”を示し、陽の気が一片も存在しない状態を表します。
立冬〜小雪〜大雪は、まさにこの“坤の領域”であり、陰が極まるプロセスの入口です。冬至という「陰の極まり」に向かい、自然界の気は土の深くで力を蓄え、作物は静かにその成長の準備を進めます。
自然農が教えてくれた陰陽の循環
立冬の朝、土が朝露で濡れていたことは非常に象徴的でした。本来なら冬の土は乾き、硬くなるはずですが、自然農を三年続けた畑では、草を積み重ねた堆肥層が土を守り、保水力を生んでいました。以前は硬かった土が徐々に柔らかくなり、水が浸透しやすく、微生物や虫の通り道が増えています。
玉ねぎの発芽も、小春日和の陽を受けて一気に進む様子に、陰陽のリズムを感じます。寒さが極まると、ふっと陽が差して作物が伸びる──これはまさに易でいう「陰極まって陽生ず」の現象です。
十二消息卦の入り口──自然と暦のつながり
十二消息卦は純太陰暦を基に作られたため、現代のグレゴリオ暦とは完全には対応しません。しかし、朝や夕の時間、日照の長さに注目すると、驚くほど自然と整合しています。古代の人々は昼夜の長さの変化を敏感に捉え、それを卦に反映させていたのです。
私はこの十二消息卦を知ることで、二十四節気をブログ化し、季節の移ろいを自然農と鍼灸治療を通じて観察する視点が格段に広がりました。マクロな自然界のリズムと、ミクロな人間の体内の変化がリンクする──そんな実感を得られるのです。
前半のまとめ
白露から立冬にかけて、自然界の陰が深まるプロセスを畑で体感し、易学の視点から読み解くことで、季節と身体の関係をより直感的に理解できるようになります。作物の発芽や土の湿り、寒さと温かさの微妙な変化は、十二消息卦でいう陰陽消長のリズムと見事に重なります。
次回は後半として、立冬を過ぎた季節の深まり、冬至に向かう陽の兆し、そしてマクロとミクロを結ぶ易学と東洋医学の関係にさらに迫ります。




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