top of page

十二消息卦 後編

  • 11月20日
  • 読了時間: 4分

和鍼治療院の易学
和鍼治療院の易学

立冬から冬至──土と身体に宿る“復”の兆し

季節の気が“陰”へ沈むとき──自然農と易学が教えてくれた冬支度の本質

 立冬を迎え、畑の土は冷たさを帯びながらも朝露で湿り、作物たちは静かにその力を蓄えています。冬の気配が深まるこの時期、自然界の陰の力は目に見えない形で増し、植物は土の奥で生長の準備を進めています。易学でいう“坤の領域”は、まさにこうした自然の静かな蓄積を象徴しています。

朝露と土の潤い──陰陽の微細な循環

 冬の土は通常乾きがちで硬くなりますが、自然農を続けた畑では、積み重ねた草堆肥が土を保護し、保水力を生んでいます。硬かった土が徐々に柔らかくなり、微生物や虫たちの通り道が増え、地下で水が循環する環境が整ってきました。

 朝露に濡れた土の匂いや温度の微妙な変化は、自然界の陰陽が微細に働く証拠です。寒さが極まると陽が差し、作物が一気に伸びる──これはまさに易の言葉「陰極まって陽生ず」を実体験として示しています。

 身体も同じように、陰が深まると気は内へ沈み、水分代謝は控えめになり、冷えや倦怠感が現れます。自然農での土の変化と、鍼灸で整える体内の陰陽変化が重なる瞬間、私は自然界と人体のリズムが見事に一致することを感じます。

十二消息卦の入り口──自然と暦のリズム

 十二消息卦は旧暦(純太陰暦)を基に作られており、現代のグレゴリオ暦とは完全には一致しません。しかし、朝明けや夕暮れの時間、日照時間に注目すると、古代の暦と現代の自然観察が驚くほど整合していることがわかります。

 昼が短く夜が長くなる立冬から小雪、大雪にかけて、陰の気はますます深まります。冬至の「復」の卦は、陰が極まり、最下の爻だけが陽に転じる瞬間を示します。つまり、冬至は一年で最も陰が極まり、その直後に陽が静かに生まれる“気の転換点”です。

冬至──一陽来復の瞬間

 冬至は昼が最も短い日であり、翌日から昼がわずかに伸び始めます。この瞬間を象徴する卦が地雷復です。最下の爻だけが陽に変わることで、「陽気の種」が帰ってくるのです。これこそが「一陽来復」と呼ばれる所以であり、自然界の陰陽のリズムと、古代の暦が見事に重なる瞬間です。

 立冬を経て冬至に向かう期間は、陰が深まり土や体の奥に力が蓄えられる時期です。そしてその陰の極みを越えることで、陽が新たに生まれる──これは、自然のマクロな動きと人体のミクロな動きが完全に対応していることを示しています。

季節の養生──陰が深まる時期の体調管理

 陰が深まる季節は、身体も自然に“閉じる方向”に働きます。皮膚は乾燥しやすく、肺や腎の働きは内向きになり、倦怠感や冷えが出やすくなります。この時期の鍼灸では、陰が深まった体内に陽の気を整え、内に閉じた気を循環させる施術が有効です。

 自然農では、土が閉じることで水分や養分を保持し、作物が静かに力を蓄える働きを観察します。体の養生と土の循環は、まさに同じリズムを共有しています。自然の変化を観察することで、易学が示す陰陽消長の意味が、より直感的に理解できるのです。

マクロとミクロ──自然と身体の共振

 ここで重要なのは、マクロの自然界とミクロの身体が密接にリンクしていることです。冬の陰の気が土の奥深くに蓄積されるように、私たちの体内でも気血水が静かに巡り、内臓は休息と蓄積の準備をします。朝露の潤い、土の柔らかさ、作物の成長──これらはすべて、自然界と身体の陰陽が呼応している証拠です。

 十二消息卦の概念を知ったことで、私はこうした自然界のリズムと身体の変化を同時に観察できる視点を得ました。易学は単なる占いや哲学ではなく、季節の移ろいや体調管理に直結する「自然観察の叡智」でもあるのです。

結び──陰が深まり、陽が芽吹く冬支度

 立冬から小雪、大雪を経て冬至へ向かうこの時期、自然界も体内も陰が深まり、静かに力を蓄えています。しかし、陰が極まる先には必ず陽が生まれます。朝露や土の温もり、作物の微かな成長──そこに、次の季節への陽の兆しを感じます。

 季節の移ろいを観察し、自然農と鍼灸の実践を通じて陰陽のリズムを理解することは、体と心の調和を整えることにつながります。和鍼治療院では、この季節感と体内リズムに沿った施術と養生法で、皆さまの冬支度を丁寧にサポートしています。

 自然界のマクロな動きと、私たちの体のミクロな変化をつなぐ易学と東洋医学の智慧──この冬、ぜひ自分の体と自然の声に耳を傾けてみてください。陰が深まる先に、必ず新しい陽が芽吹くことを、自然界と身体の両方で感じることができるでしょう。

コメント


  • Facebook

Copyright Washin Oriental Medical Office. All Rights Reserved

bottom of page