小寒
- 1月4日
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小寒 ―― 一陽来復の先にある、冬の深まり
2026年は1月5日から、二十四節気の「小寒」に入ります。冬至を過ぎ、「一陽来復」という言葉に触れると、寒さの底を越えたような印象を受けますが、自然界の歩みはそこからが本番です。実際の寒さは、小寒から大寒にかけて、いよいよ深まっていきます。
この時期、日本列島は大陸からの寒気の影響を強く受けます。シベリア高気圧が発達し、冷たい北西の季節風が吹き付けることで、体感としての冷えは一年で最も厳しくなります。暦の上では陽気が生じ始めていても、気候としては冬が完成する段階にあるのが小寒です。
東洋医学では、この「暦と体感のずれ」を重視します。陽が生まれ始めるとはいえ、身体が外へ向かうにはまだ早く、むしろこの時期は、いかに陽を漏らさず、内に守るかが養生の要となります。冷えが深部に入りやすい今、無理に活動量を増やすことは、春先の不調を招く一因ともなり得ます。
日本人の季節感覚は、こうした自然の歩みを、行事や信仰の中に織り込んできました。奈良・東大寺の修二会(お水取り)も、その象徴的な存在です。修二会は、3月14日に行われる松明行をクライマックスとして一連の行が結ばれます。十一面観音にお供えする水が汲まれたのち、ようやく春が訪れる――昔の人々は、そのように季節の転換を感じ取ってきました。
立春を過ぎてもなお寒さが残り、実際の春は修二会を経てから静かに始まる。この感性は、気温や日付では測れない、身体と暮らしを通して育まれた暦と言えるでしょう。
近年の臨床では、小寒を迎えた頃から、花粉症のような症状を訴える方が見られることがあります。割合としては多くはありませんが、のぼせ感、乾いた咳、くしゃみ、耳の違和感などを伴うケースがあり、寒さによる反応とはやや趣を異にします。
これらは、冬至以降に増し始めた陽気が、十分に蓄えられていない陰の上に現れることで、身体が先に春の兆しを示している状態と捉えることができます。秋から冬にかけての陰の貯蔵が不足していると、季節の変わり目を待たずして、身体が反応を起こしてしまうのです。
和鍼治療院には、こうした時期に「花粉症とは思っていないが、何となく調子が悪い」と来院される方が少なくありません。頭が重い、眠りが浅い、喉や耳に違和感がある、理由のない不安感が続く――一見ばらばらに見えるこれらの不定愁訴の背景に、陰虚の兆候が認められることがあります。
陰虚は、症状としては目立ちにくく、本人も病気とは感じにくい状態です。しかし、身体の潤いが不足したまま春を迎えると、のぼせやアレルギー症状、気分の不調として表に現れやすくなります。小寒・大寒の時期は、そうした変化が静かに始まる重要な節目です。
冬至を過ぎてから陰を補うのは遅い、と考えられがちですが、寒さが極まる小寒・大寒の時期こそ、意識して陰を養い続けることが、春を穏やかに迎えるための確かな土台となります。小寒は、春への入口ではなく、春に向けた準備を静かに整える節目。自然と身体、その両方の声に、丁寧に耳を澄ませたい時期です。




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