脊髄梗塞の症例 (前篇)
- 和鍼 大阪鍼灸 小島秀輝
- 7月1日
- 読了時間: 3分
更新日:7月2日

― 突然、下半身が動かなくなる疾患 ―
昨日まで普通に歩いていた人が、ある日突然立ち上がれなくなる。
足に力が入らない。
感覚もない。
そしてトイレにも行けなくなる。
そのような病気があることをご存じでしょうか。
近年では、NHK「おかあさんといっしょ」で親しまれた体操のお兄さん・佐藤弘道さんが発症されたことで、「脊髄梗塞」という病名を初めて耳にした方も多いかもしれません。
脊髄梗塞とは、脊髄へ送られる血流が何らかの原因で障害され、神経組織が損傷を受ける病気です。
脳の血管が詰まる脳梗塞は広く知られていますが、脊髄でも同じような現象が起こることがあります。
発症頻度は脳梗塞に比べて少なく、一般にはあまり知られていません。
しかし一度発症すると、
・下肢の麻痺
・感覚障害
・歩行困難
・排尿障害
・排便障害
など、生活を大きく変えてしまう症状が現れます。
今回ご紹介する患者さんは現在80代。
発症したのは60代後半の頃でした。
ある日、友人との飲み会の席で席を立とうとした瞬間、突然下半身に力が入らなくなります。
その場で立ち上がることができず、そのまま救急搬送されました。
当初の診断は腰椎ヘルニア。
手術の話まで進んでいたそうです。
しかし病院長による再診察で、
「これはヘルニアではない」
と判断され、精密検査の結果、脊髄梗塞であることが判明しました。
もしそのまま手術が行われていたら、結果は大きく違っていたかもしれません。
急性期には入院加療が行われ、その後リハビリへ移行しました。
私が初めてお会いしたのは、退院直前の一時帰宅が許可されていた頃です。
当時は両下肢の感覚がほぼ消失し、移動は車椅子。
排尿感覚もなく、尿を保持することも困難でした。
排便も薬を使わなければ行えない状態でした。
脊髄梗塞は単に歩けなくなる病気ではありません。
排泄という、人間が生活するうえで最も基本的な機能にまで大きな影響を及ぼします。
そして、その苦しみは外からは見えません。
歩行の障害は周囲から理解されやすいものです。
しかし尿意や便意の消失、失禁への不安は本人にしか分からない苦痛です。
患者さんは後に、
「外出するのが怖かった」
と当時を振り返っておられました。
脊髄梗塞という病気は命が助かれば終わりではありません。
そこから始まる長い回復の道のりがあります。
次回は、車椅子生活から再び歩けるようになるまでの経過をご紹介したいと思います。




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