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黄色の容器

健康と病

 消炎鎮痛剤の誘惑

 

アスピリンには、プロスタグランジンが引き起こす痛み、発熱、リンパ球の炎症を止める効果があります。

それはアスピリンがプロスタグランジンの合成を阻害することができるからで、同時にカテコールアミン系と呼ばれるホルモンの生産を高めます。

プロスタグランジンとカテコールアミンの産生とは、拮抗関係にあるからです。

アスピリンを使うと、意図的に交感神経を刺激することができるため、使用してすぐは元気になり、大量のエネルギーを消費するようになります。

アスピリンにはこういう働きがあるため、アメリカ社会では好んで大量にアスピリンを消費する人がいるようです。

映画を観ていると、ハリウッド映画の主人公が、洗面台の棚や車のダッシュボードから、黄色のプラスティック容器に入った錠剤を大量に口に入れるシーンに出くわすことがあります。

このようなシーンを見かける度に、何を飲んでいるのか気にはなっていたのですが、こうやって分析してくると、どうやらアスピリンだということがわかりました。

実際にアメリカでは、アスピリンを飲むと大量にエネルギーを消費するようになることから肥満予防として使用したり、狭心症、心筋梗塞、大腸がんの発生を抑制するために医師が処方したりしているようです。

ところが最近では、アスピリンの服用が脳卒中のリスクを高めるという報告があいついでいます。

アスピリンを使用する療法では、意図的にカテコールアミン系の産生を高めることで、一時的に元気が出るように思えるのですが、次第に動脈硬化を進めることになり、老化を促進するようなあらゆる症状が生体のあちこちで進行することになります。

皮肉にも、長期的には、狭心症、心筋梗塞、大腸がんのリスクが高まることになります。

そこで、Tさんに起こった副作用はどのように説明できるか考えてみます。

Tさんは70代後半という高齢者であり、老化による筋力低下が徐々に顕著になっています。

日常生活以上の労働をすると、もともとの体調不良以外に、筋肉疲労が加わり、血流障害が起こりやすくなります。

今回は掃除のお手伝いということで、窓ガラスを拭く作業をかなり繰り返したようです。

これによって生じた血流障害は、関節に変形を起こすほどの影響与えました。

掃除から帰宅後に出た痛みは、血流が回復して、虚血後の再灌流が起こるときに生じる炎症によるものです。

この痛みの正体は、実際は組織の治癒過程で起こる必然の反応なのですが、痛みの発症メカニズムを知らない一般の人は、ついつい痛み止めの薬を使用して、症状を抑制してしまいます。

困ったことに、Tさんの問題は、痛みを消し去ることが病気を治すことだと勘違いしているため、薬の副作用について全く学ぼうとしないところにあります。

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