目の疲れは目だけの問題?②

東洋医学の「肝は目に開竅する」とは
前回は、目には多くの脳神経が関わっていることをご紹介しました。
「見る」だけなら視神経だけでよいように思います。
ところが実際には、
というさまざまな働きに、多くの神経が関わっています。
目は、脳や身体と密接につながった器官なのです。
では、東洋医学では目をどのように見てきたのでしょうか。
そこで登場するのが、
「肝は目に開竅する」
という考え方です。
「肝は目に開竅する」とは?
その中で、
肝 → 目
と考えます。
ここで注意したいのは、東洋医学の「肝」を、現代医学の「肝臓」とそのまま同じものとして考えないことです。
東洋医学の肝には、
血を蔵する
筋を主る
気の流れを調える
精神活動にも関わる
など、現代医学の肝臓という臓器だけでは説明できない、幅広い機能が含まれています。
だから、
「目が疲れた=肝臓が悪い」
という意味ではありません。
ここはとても大切なところです。
「肝血」が目を養う
東洋医学では、
「肝は血を蔵す」
と考えます。
さらに古典には、
「肝受血而能視」
という考え方があります。
肝が血を受けることで、目がものを見ることができる。
つまり、目の働きを目だけの問題として考えず、
身体でつくられる気血↓肝がそれを蔵する↓その働きが目に現れる
という身体全体のつながりで考えていたわけです。
では、目を使いすぎると「肝」が疲れるのか?
ここも単純に考えることはできません。
例えば、長時間パソコンを使っている人。
一日中スマートフォンを見ている人。
睡眠不足が続いている人。
仕事や人間関係などで緊張が続いている人。
同じ「目の疲れ」でも、身体の状態は一人ひとり違います。
そこで東洋医学では、
目だけを見て治療するのではなく、身体全体を診る
という考え方をします。
脈、舌、腹部、冷え、筋肉の緊張、睡眠、食欲、排便など。
さまざまな情報を合わせて、その人の身体の状態を考えます。
肝だけではない。脾胃や腎も関係する
ここも東洋医学の面白いところです。
肝と目の関係が重要だからといって、すべてを「肝」の問題にしてしまうわけではありません。
例えば、身体の気血を生み出すためには、
脾胃の働き
が重要です。
また、生命の根本となる「精」を蔵する
腎
も、長期的な身体の状態を考えるうえで重要になります。
東洋医学では「精血同源」とも考えます。
そのため、
脾胃 → 気血をつくる↓肝 → 血を蔵する↓目 → 肝血によって養われる
という関係だけでなく、
腎精 → 肝血 → 目
というつながりも考えることができます。
目の疲れをきっかけに、身体全体の状態を見ていく。
これが東洋医学の特徴です。
現代の「神経」と東洋医学の「肝」は同じなのか?
ここは慎重に考える必要があります。
現代医学の神経学と、東洋医学の臓腑論は、成立した時代も身体の捉え方も違います。
ですから、
「脳神経の仕組みがあるから、肝は目に開竅することが科学的に証明された」
という話ではありません。
しかし、両者には興味深い共通点があります。
それは、
目を身体から切り離して考えていない
ということです。
現代医学では、目は脳神経や自律神経、前庭系などと複雑につながっています。
東洋医学では、目を肝・血・筋・腎精・脾胃などとのつながりの中で捉えます。
見ている言葉や理論は違っても、
「目は全身の状態を映し出す重要な場所である」
という視点には、考えてみる価値があるのではないでしょうか。
和鍼治療院では「目だけ」を見ません
目の疲れがあるからといって、必ず目の周囲に鍼をするわけではありません。
なぜなら、同じ「目の疲れ」でも、その背景にある身体の状態は違うからです。
睡眠不足なのか。
首や肩の緊張なのか。
身体全体の疲労なのか。
脾胃の働きが落ちているのか。
肝血の不足を考える状態なのか。
あるいは別の要因があるのか。
四診を通して身体全体を観察し、その人にとって何が必要なのかを考えます。
一本の鍼を使ったら、その変化を確かめる。
必要なら次の鍼を使う。
そのように身体の反応を見ながら治療していきます。
目の疲れは、身体からのサインかもしれない
「目が疲れたから、目を休ませる」
これはもちろん大切です。
しかし、休んでもなかなか疲れが取れないときには、
「目だけが疲れているのだろうか?」
と、一度身体全体を見直してみることも大切です。
東洋医学では、目は「肝に開く」と考えてきました。
目は、身体の外に現れた一つの窓です。
その窓に現れた変化を手がかりに、身体全体を見ていく。
それが、東洋医学の身体観の一つなのです。
目の疲れを、目だけの問題として終わらせない。
身体の声を聴く。
それもまた、東洋医学の治療なのだと思います。




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