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ヒュギエイアの杯

和鍼の未病治

ヒュギエイアは、ギリシア神話に登場する女神で、健康の維持や衛生を司ります。
父は、ギリシアの医神・アスクレピオスです。
アスクレピオスの杖が「医学のシンボル」とされるのに対し、ヒュギエイアの杯「薬学のシンボル」として用いられることが多いようです。
また、ヒュギエイアの名はギリシア語で「健康」を意味します。

古代ギリシアにおいて、ヒーラーたちは、ヒュギエイアを信奉していました。
身体には本来、病気を引き起こすものに抵抗し、それに対処する自然の能力が備わっていると考えていたからです。
アスクレピオス派は、トリートメント(治療)に関心があり、ヒュギエイア派、ヒーリング(治癒)に関心がありました。


治療は外部から施し、治癒は内部から起こります。
ヒーリングの意味は、「ひとつの全体にすること」であり、身体の状態とバランスを回復することです。
東洋医学の考え方は、身体の防衛機能を高めたり、全体のバランスを整えることを重視します。


この点において、東洋医学は、古代ギリシアのヒュギエイア派の考え方と同じであると言えます。

古代ギリシアには、アスクレピオス派の医師と、ヒュギエイア派のヒーラーとの二つの考え方がありました。
アスクレピオス派の考え方は、そのまま西洋医学へと受け継がれていきました。
顕微鏡の発明によって、細菌やウイルスが発見されるようになり、ワクチンや抗生物質が誕生します。
病原体の発見は、アスクレピオス派の考え方を進歩させ、より多くの信頼を得ることに成功していきました。
それによって多くの命が救われてきたのですが、その一方で、医原病という厄介な問題も深刻になっています。

「特効薬」と思われた抗菌剤ですが、近年、その効力が急激に低下しているようです。
理由は、病原体である細菌が、急速な勢いで、新しい抵抗メカニズムを生み出しているからです。
以前ならば、抗生物質を使って治療できたはずの感染症で、死亡する可能性が出ているのです。
一部の感染症専門医の中には、抗生物質に頼れなくなった時のことを考え始めている人がいます。
耐性菌の増加や、腸内環境の変化がもたらす難病の問題として、クローズアップされていることとも関連があります。

世界的に、代替医療としてヒュギエイア派の考え方が尊重されるようになっています。
それは、現代においては目新しく映ることではありますが、古代ギリシアの時代からあった考え方であります。
しかも我々が住むアジア圏の医療は、中国医学の影響を強く受けてきた歴史があります。
中国医学は、ヒュギエイア派の考え方と同じであり、漢方薬や鍼灸が世界で注目される理由です。
自らの防衛機能を高めたり、全体のバランスを整えることは、病を治すためにとても重要なことです。
ヒュギエイアの信者にとって健康とは、「ものごとの自然な秩序のこと」であり、「自己の生命を制御した人に与えられる無条件の属性」でありました。
彼らにとって、医学の重要な機能は、人に「健全な身体に宿る健全な精神」を保証してくれる自然法則を発見し、それを人々に教えることでした。
日本の医療にも、ヒュギエイア派の考え方が広がることを望んでいます。


 

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