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矛盾

自然死

この世の中で、貫くことができないものはないと評判の矛があります。
この世の中で、いかなるものも徹さないことで有名な盾があります。

このように宣伝する武器商人がいました。

その時、一人の客が、自慢のお前の矛でお前の盾を突いたらどうなるかと質問しました。
有名な矛と盾の中国の故事です。
最強の矛と最強の盾の関係は、陰と陽の関係と同じでしょうか。


「攻める矛」と「守りの盾」という対比は、一見すると「陰陽の対立関係」と同じです。
しかし、なんでも貫く矛と、何も徹さない盾というところには、互根関係がありません。

つまり、陰中の陽、陽中の陰がありません。
陰陽論の前提には、形而下のものにおいて、陽だけのもの、陰だけのものが存在しないことがあります。

対立しながらのお互いに支え合うという関係が必要です。
それゆえに、「完璧な矛」も「完璧な盾」も存在しないことになります。
つまり、矛盾は陰陽の関係ではないということになります。


矛盾という考え方は、中国ではあまり掘り下げて考察されることはありませんでした。
韓非子が矛と盾の話であらわしたかった「論理的な矛盾」は、中国においても長い歴史の中で議論されたようですが、結局のところ、話はそれ以上に深みを増すことはなく、論理的に通用しないこととして実用的に処理されることになります。
矛盾という関係は、二元論の考え方で、油と水のように交わることがありません。

悪や善という西洋的な二元論は、東洋的ではありません。

中国で尊重された陰陽は、一元論であり、対立しながらもお互いを支えあう関係であると言えます。

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