雨水
- 2月18日
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雪がほどけ、水が動き、身体が目覚めるとき
二十四節気の第二節気「雨水」。2026年は2月19日から3月4日頃までにあたります。立春を過ぎ、暦の上では春がさらに一歩進む節目。名のとおり「雨の水」と書きますが、その意味は単に雨が多くなるということではありません。
古来、雨水とは「降るものが雪から雨へと変わり、積もった雪や氷が解け始める頃」を示してきました。太陽の位置(黄経330度)によって定められたこの節気は、自然界における“相の転換”を象徴しています。冬のあいだ固く閉ざされていた大地がゆるみ、山の雪はしずくとなり、土中の水が動き出す。目に見える景色以上に、地下で、内部で、水が循環を始める時期なのです。
日本の太平洋側では、冬至以降、乾燥した晴天が続く年も少なくありません。実際、冬季(12月〜2月前半)は降水量が少ない傾向があり、「雨水だから雨が増える」と単純に言い切れるわけではありません。しかし雨水の本質は降水量そのものではなく、凍結していた水が解放され、流れ始めることにあります。
雪が溶けるという現象は、自然界の緊張がゆるむことを意味します。凍結は「収縮」、融解は「拡張」。この転換は、実は私たちの身体の変化とも重なります。
さらに雨水は七十二候に分かれ、より細やかな自然の変化を表します。
・土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)
・霞始靆(かすみはじめてたなびく)
・草木萌動(そうもくめばえいずる)
土が湿り、霞がかかり、草木が芽吹く。これらはすべて“内側からの動き”です。派手な変化ではなく、静かな兆し。だからこそ、身体の内側の変化にも敏感でありたい時期でもあります。
立春から三寒四温へ——揺らぐ季節のなかで
立春を迎えると、例年通り花粉症の初期症状が増え始めます。目のかゆみ、鼻の違和感、咽の乾燥。多くの方が花粉飛散情報に目を向けますが、実際の臨床では寒暖差による自律神経の揺らぎが症状を強めているケースが少なくありません。
これからの時期は「三寒四温」。三日寒く、四日暖かい。その繰り返しが春本番への助走となります。
冬のあいだ身体は収縮し、守りの姿勢を取っていました。血管は締まり、毛穴は閉じ、熱を逃がさない状態です。ところが暖かい日が訪れると、身体は一気に開こうとします。この急激な切り替えに自律神経が対応しきれないと、さまざまな不調が現れます。
・花粉症の悪化
・倦怠感や眠気
・頭痛や肩こり
・めまい
・風邪様症状
さらに注意すべきはヒートショックです。三寒四温の時期は、日中と朝晩の気温差が大きくなります。入浴時や早朝の行動で血圧が急変するリスクは、真冬に限った話ではありません。
花粉だけを原因とするのではなく、寒暖差という見えにくい刺激にも目を向けることが大切です。
東洋医学からみた雨水と養生
東洋医学では、春は「肝」の季節。肝は“疏泄(そせつ)”——気を巡らせる働きを担います。
雨水は、水が動き出す節気。体内でいえば、血や津液の巡りが変化し始める時期でもあります。
暖かい日に気が上昇しすぎれば、のぼせや目の充血、イライラへ。寒い日に縮こまれば、鼻水や咳、関節痛へ。三寒四温とは、気の昇降が揺らぐ時間でもあるのです。
この時期の養生は「安定」が鍵。
・首元を冷やさない
・朝は急に動かず深呼吸から始める
・入浴は38〜40度で穏やかに
・軽い散歩やストレッチで巡りを整える
・生姜や春野菜など、温性と香りを少量取り入れる
無理に春へ飛び込まず、段階を踏んで移行することが大切です。
春のスタートラインへ
雨水は、春本番の直前。自然界は急がず、しかし確実に変化します。
雪解けの水が地下を流れ、草木が芽吹く準備をするように、私たちの身体もまた、静かに目覚め始めています。
この時期に巡りを整えておくことは、花粉症の軽減だけでなく、春本番に起こりやすい疲労感や不眠、情緒不安定の予防にもつながります。
当院では、三寒四温の揺らぎに対応するため、自律神経の調整、首肩の緊張緩和、気血の巡りの回復を目的とした鍼灸を行っています。花粉症も単なるアレルギー反応としてではなく、季節との適応の問題として診ます。
雨水は、水が動く節気。身体の内なる水と気もまた、動き出しています。
春は、準備した人から軽やかになる。
雪解けのように滞りをゆるめ、巡りを整え、穏やかな春のスタートラインへ。どうぞ、季節に寄り添う養生を今から始めてみてください。




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