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WHO憲章と「魂」

健康と病

世界保健機構(WHO)は、その憲章において、「健康」について定義しています。

 

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 

健康とは、 肉体的にも、精神的にも、社会的にも、完全に良好な状態であり、単に疾病や病弱ではないという状態ではない。

 

日本WHO協会の和訳では「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」となります。

 

このWHO憲章の健康定義は1946年から大切に守られてきたのですが、1998年に下記のような新しい提案がなされました。

 

Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 

 

初期の憲章との違いは、dynamicspiritualの二つの言葉が加えられたところにあります。

 

dynamicを「状態」の前に付けたということは、健康と病が分離できるものではなく連続的な関係にあることを意味しています。

健康や疾病は、静的に固定している状態でないことを表現しています。

 

そしてspiritualは、「魂」を意味する単語です。

physical(身体)mental(心)という二つの関係に加えて、spiritual(魂)を加えるという提案は、とても画期的なことです。

私たちは、部品の寄せ集めから成り立つ「モノ」ではありません。

五つの感覚器官と意識を持つ霊長類の最高峰に位置する「イキモノ」です。

それ故に、WHO憲章において「身体」と「心」の状態が良好であることが大切であるとしていることは非常に注目すべきところです。

 

20世紀は科学が世界を急激に変革させた時代であり、それは医療にも大きな影響を与え、功績を残しました。

科学技術による高度な医療によって、延命治療が可能となり、助けることができる命が増えました。

人類は、西洋医学の進歩によって多くの恩恵を受けることができる一方で、QOL(生命の質)という新たな課題と向き合う必要が生じました。

このことは、生理的な生や死とは異なる、高次元の何かが必要ではないかと世界的に求められていることのあらわれです。

科学は、物質を研究する分野であり、それゆえにエビデンスを重要視します。

しかし我々人類が探求できたことはほんのわずかであり、特に霊魂に関しての研究はほとんど進歩がないのが現状です。

そんな最中、WHOの議会において、物質的ではないspiritualを憲章に加えようと提案がなされました。

その結果、参加した国の内、賛成22、棄権が8、反対が0でした。

これまでの西洋医学による医療が色濃く反映された憲章から、伝統医療や代替医療を包括するような考え方の一つとしてspiritualの提案がなされたものと解釈しております。

そのことは、従来の唯物論的人間観から、身体・心・魂という三位一体の本来の十全的な人間観への転換として捉えることができます。

21世紀は、「魂」の学問的研究が進むことが期待されています。

現代の世界では、宗教的な争いが続いていますが、それぞれの垣根を超えて、「spiritualと健康の関係」が深まることを望みます。

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