妊娠しにくい原因
(東洋医学編)
1 腎虚による不妊
東洋医学における腎臓は、生命力そのものであり、身体機能を維持するために必要なエネルギーを貯蔵している場所です。
睡眠不足、過労などで腎臓のエネルギーが不足しやすくなります。
腎臓が弱ることは、生命力が低下することであり、不妊の原因となりやすいです。
生まれつきに身体が弱い女性、腎機能が弱い女性、出産や流産の後で体調管理を誤った女性などに「腎虚」の傾向があります。
特徴は、月経の量が少なく、顔色が艶がなくて黒く、疲れやすい。腰が痛みやすく、足の力が弱い。
水溶性の黄色いおりものがある。
性欲は減退し、小便は真水のように透明です。
2 血虚による不妊
「体痩不孕」(たいそうふよう)という言葉があります。
意味は、あまりに痩せすぎると妊娠できない、ということです。
無理なダイエットや急激な体重の減少は、女性の生理に多大な影響を与えます。
女性の体脂肪率が22%以下に減少すると、無月経のような月経異常をきたすことが多いです。
アスリートの女性に月経異常が多いのは、この理由からです。
体重が減少すると、血液が不足します。血液が不足している状態を、東洋医学では「血虚」といいます。
血液が不足し、健康を維持できないと、月経も不規則となり、妊娠したとしても胎児を維持することが難しくなります。
胎児への栄養補給が充分にできないからです。
特徴は、月経の量が少なかったり、月経が遅れたり、不規則だったりします。
また、めまいがしたり、元気が出なかったり、顔色が蒼白だったり、といった状態が出ます。
3 痰湿による不妊
「体肥不孕」(たいひふよう)という言葉があります。
あまりに太りすぎていると妊娠ができません、という意味です。
体重が増加すると、体脂肪が増えます。
急激な体脂肪増加は、ホルモンの均衡を壊す高インスリン症を引き起こし、多嚢胞性卵巣症候群などの疾病となります。
多嚢胞性卵巣症候群とは、卵巣で育った卵胞が成熟卵胞に育たずに、排卵ができなくなり、無月経や稀発月経を引き起こします。
体重増加に伴い、身体に悪影響となる老廃物が溜まります。これを「痰湿」と、東洋医学ではいいます。
痰湿が気血の流れを阻害し、子宮に行くはずの血を妨害するので、妊娠ができなくなると考えます。
特徴は、回転性のめまい、頭痛、頭が重たい、胃のむかつき、身体が重たく感じる、むくみ、粘着性のおりものなどです。
和鍼治療院では、脾臓の調整をしてまいります。
4 肝鬱による不妊
東洋医学では、人間の感情を7つ(喜・怒・憂・思・悲・驚・恐)に分類し、七情と呼びます。
七情の均衡が崩れると、ストレスとなり、身体に悪影響を及ぼすようになります。
女性の場合、過度のストレスは、排卵と月経を司る自律神経の中枢(視床下部・脳下垂体・卵巣)に影響し、
ホルモンバランスが乱れ、気の流れが悪くなります。これを「気滞」と呼びます。
東洋医学において、「気滞」は肝臓と関係が深く、肝臓の経絡上に様々な症状が出やすくなります。
肝臓の経絡上には、下腹部や子宮、乳房が関係しているため、女性特有の病気全般に関係してきます。
また、気の流れの悪さは、血流の悪さとなり、「瘀血」という汚れた血液を生じます。
生理痛、生理中の血塊、肌のきめが悪くなる、細かい毛細血管が浮き出るといった症状となります。
肝鬱の特徴は、下腹部のチクチクとした痛み、月経前の乳房の痛み、口が苦い、めまい、ひどい頭痛、わき腹が張って、ため息が出るなど。
不妊症で悩むことも最大のストレスとなります。
精神的な圧迫感を感じている方は、気滞を取り除く必要があります。
和鍼治療院では、気滞を速やかに取り除き、リラックスした状態に心身を調整いたします。
5、子宮寒による不妊症
漢方に少しでも興味がある方であれば、冷え性が妊娠に悪影響を与えることはすでにご存じのことと思います。
東洋医学では、昔から、下腹部が冷えることを不妊の重要な原因として捉えてきました。
この場合の「冷え」とは、単なる体温の低下ではなく、身体の機能低下や代謝の低下を意味します。
東洋医学では、人体を上焦・中焦・下焦と三等分する考えがあり、臍から下の部分を下焦とします。
下焦の機能低下は、月経・妊娠・出産を司る生殖機能低下を意味し、子宮の冷えとは、下焦の血液循環や血液供給の滞りを意味します。
子宮寒の方の多くは、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫など器質的疾患があるようです。
生理痛がひどい、頻尿傾向、透明のおりものが多いなどの症状があります。