寒露

10月8日は、二十四節気の「寒露」です。
草木に降りる露が、次第に冷たく感じられる頃。
秋も深まり、夏から冬へ向かう季節の変化が、少しずつはっきりしてくる時期です。
今年の9月は、秋雨前線や台風の影響で、日本各地で雨の日が多くなりました。
農家にとっては、稲刈りの時期です。
稲が実りを迎えても、雨が続けば簡単には刈り取ることができません。晴れの日を待ち、田んぼの状態を見ながら、収穫のタイミングを決めることになります。
自然を相手にする農業では、暦だけではなく、その年、その場所の自然の変化をよく観ることが欠かせません。
そして、私たちの身体もまた、季節の変化を受けています。
10月に入り、急に変わった空気
10月に入ってから、気温の低下が著しくなりました。
夜間には15℃を下回ることも珍しくありません。
少し前まで暑さを気にしていたのに、今度は朝晩の冷え込みを意識するようになりました。
この頃になると、
「風邪をひいた」
「喉の調子がおかしい」
「鼻の症状が出てきた」
「アレルギーが悪化した」
「身体が冷える」
といった変化を感じる方も増えてきます。
季節が変われば、身体も変わります。
その変化は、必ずしも病気という形で突然現れるわけではありません。
眠りが浅くなる。
疲れが抜けにくくなる。
呼吸が浅く感じる。
身体が重くなる。
冷えを感じるようになる。
そうした小さな変化として現れることもあります。
だからこそ、この時期は自分の身体をよく観ることが大切です。
季節の変化と自律神経
季節の変わり目になると、「自律神経が乱れている」という言葉を耳にすることがあります。
気温や湿度、日照時間、睡眠、生活リズムなどが変化すれば、身体の調節機能にも負担がかかります。
しかし、東洋医学では、こうした変化を一つの機能だけの問題として切り離して考えません。
身体全体が、外界の変化に応じて変わっていく。
その変化の中に、冷えや呼吸器の不調、アレルギー、疲労、睡眠の変化などが現れてくる。
だから私は、症状だけを見るのではなく、その人の身体全体を観ることを大切にしています。
「いつもと何が違うのか」
そこに、その人の身体が発している情報があります。
冷えを感じる人は、これからを少し慎重に
特に冷えを感じやすい方は、これから気温がさらに下がっていくことを考えて、身体を冷やしすぎないようにしたい時期です。
朝晩の服装を調整する。
湯船につかって身体を温める。
睡眠を十分にとる。
食事も、夏のように身体を冷やすものに偏らないようにする。
どれも特別なことではありません。
しかし、こうした小さな養生が、これから迎える冬の身体を支えていきます。
夏の間、私たちの食卓を支えてくれた夏野菜も、そろそろ終わりを迎えようとしています。
自然界では、夏の盛んな活動が収まり、実りを収め、次の季節へ向かう準備が始まっています。
食卓の変化もまた、季節の変化を教えてくれます。
スポーツをする人も「いつもの身体」とは限らない
この季節の変化は、スポーツをする人にとっても無視できません。
気温が下がれば、身体の状態も夏とは変わります。
十分に身体が温まっていない状態で急に強い運動を始めれば、筋肉や関節への負担が大きくなり、ケガにつながる可能性もあります。
さらに、睡眠不足や疲労が重なれば、身体の調整力が落ちていることもあります。
「いつも通りに練習しているから、いつも通りに動ける」
とは限りません。
その日の身体を観る。
疲労は残っていないか。
身体は十分に温まっているか。
いつもと違う張りや痛みはないか。
こうした小さな変化に気づくことも、身体を守るための大切な方法です。
心の変化も、身体から切り離さない
季節の変化は、身体だけに現れるものではありません。
日照時間や睡眠リズム、気温などの変化によって、気分や思考に影響が出ることもあります。
何となく気分が晴れない。
やる気が出ない。
考えがまとまりにくい。
そうした変化も、身体と無関係ではありません。
もちろん、強い抑うつ状態が続く場合には、医療機関に相談することが大切です。
そのうえで、東洋医学では昔から、心と身体を完全に分けて考えることはありませんでした。
身体を観ることは、心を観ることでもある。
心の変化を観ることも、身体全体を観ることにつながります。
自然を観る、身体を観る
今年の秋は、雨が多く、稲刈りの時期を見極めることも難しい年になりました。
田んぼの状態を観る。
空を観る。
風を観る。
気温の変化を観る。
そして、収穫の時期を決める。
農家の方々は、自然の変化を感じ取りながら、その時々の判断をしています。
私たちの身体も同じなのかもしれません。
「10月だからこうする」のではなく、
今、自分の身体はどうなっているのか。
そこを観ることが大切です。
暑さが残っているのか。
冷え始めているのか。
疲労が蓄積しているのか。
呼吸が浅くなっていないか。
眠れているのか。
食欲はどうなのか。
身体は、季節の変化をさまざまな形で教えてくれています。
東洋医学でいう「身体の声を聴く」ということは、こうした小さな変化を見逃さないことでもあります。
寒露の先にあるもの
寒露は、冬そのものではありません。
夏の名残を残しながら、秋が深まり、少しずつ冬へ向かっていく、その途中にあります。
自然界では、陽の勢いが次第に衰え、陰の気が増していく。
植物は実りを収め、人も少しずつ活動を内へ収めていく。
身体もまた、夏とは違う準備を始めています。
だから寒露は、何か特別なことをする日というよりも、
「季節がどちらへ向かっているのかを感じ取る時期」
なのだと思います。
自然の変化を観る。
身体の変化を観る。
そして、自分自身の変化を観る。
そうしていると、季節の移り変わりの中に、私たちの身体も自然の一部として動いていることが少しずつ見えてきます。
今年の寒露。
いつもより少しだけ、空気の冷たさに目を向けてみてください。
朝の光、夕方の風、草木についた露、食卓に並ぶもの、そして自分の身体。
そこには、次の季節へ向かう変化が、すでに始まっています。
季節を観ることは、身体を観ること。
そして身体を観ることは、自分自身を知ることなのかもしれません。




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