体表観察について
体表観察
東洋医学の優れているところのひとつに、診察における体表観察があります。
医学的な歴史を振り返ると、西洋医学も東洋医学も、人体をよく観察したことで進歩を重ねてきたといっても過言ではないでしょう。
同じように観察を重ねたはずが、西洋医学と東洋医学は人体の捉え方に大きな違いが生じます。
西洋医学が解剖によって得られた情報を重視し、機械のようにバラバラの部品から成り立つと考えるのに対し、東洋医学は人体を一個の有機的な統一体とみなしており、その統一体が自然環境とも有機的な関係を営んでいると考えています。
生命本来の姿を捉えようとするとき、東洋医学においては、「表をもって裏を知る」という診断方法を使います。
それは体外に現れる現象を観察することで、体調の変化や病気の所在を明らかにしていくことなのです。
そのことを東洋医学では蔵象学といいます。
古代中国の金鉱発見方法にも同じ考え方を見ることができます。
金鉱を発見しようとする際、いちいち深く掘って確かめているようではとても大変です。
そこで考え出されたのが、山に生い茂る木を見て、また土の色とそこに生える植物を見て、その下に金があるかどうか判断する方法です。
東洋医学では、内側にあるものは、必ず外に現れるという考え方をします。
身体の状態を正確に判断することは容易ではありませんが、蔵象学を用いることでかなりのことを把握することが可能になります。
東洋医学の診断方法には四診がありますが、そのうち「望診」「聞診」「切診」の3つが、「表から裏を知ること」と関係があります。
望診は、肌の色とつや、眼の力強さ、姿勢、舌の状態などから身体の状態を診察します。
聞診は、呼吸の息使い、話す声の質、体臭などから身体を診察します。
切診は、脈や皮膚を実際に触ることで、身体が訴えている情報を収集することが可能となります。
このように、東洋医学は、生命活動をいとなむ生きたままの身体を、一つのまとまりとして丸ごと把握しようとして、「気一元論」・「蔵象学」などの考え方を見つけ出し、その理論に基づく診断方法を確立しました。
体表観察は、東洋医学の優れた身体観察手段であり、優れた病気診断方法であります。