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  • 小島 秀輝

「脾」の冷え 銀盤のフェアリー②


ふらつきの原因と治療方針が決まったことにひとまず安堵しました。

しかし、「脾の臓」が悪くなった原因が不明のままです。

水邪の影響がふらつき以外にもあるのかどうか、調べる必要があります。

そこで、口のマスクを一旦外してもらい、舌の色と苔の状態を再度確認しました。

舌色は淡紅(淡い赤色でやや冷えがある可能性を含む)、苔は薄いけども舌全体を覆うように白く存在していました。

舌の色は基本的に赤色ですが、その濃淡は体質や体内の寒熱を調べる目安となります。

舌の上の苔は、体質や体内に存在する水分量を調べる目安となりますが、身体の元気の割合によっても増減するため、知識と経験を用いて判断することになります。

淡紅の舌色と薄い苔(白色)から判ることは、体内に冷えが存在する可能性です。

もしも冷え(寒邪)によって脾の働きが低下しているのであれば、消化機能に何らかの影響が出ているはずです。

問診表の項目中、食欲がない、良く下痢になる、乗り物酔いする、腹が痛いに、「時々起こる」という印が付いていました。

舌診と問診の両方を合わせたことで、冷え(寒邪)の影響であることが濃厚になりました。

特に印象深い話が、一ヶ月程前から大便が軟便となり、それと同時期から食欲が低下するようになったことです。

この問診の内容で、脾の臓の弱りを証明する決定要因となりました。

冬の季節であっても、太陽の降り注ぐグランドや風の影響を受けにくい体育館でのスポーツとは異なり、氷の上で長時間の練習を繰り返すスケートはかなり冷えることは想像できます。

ところがこれにも大きな疑問点が残ります。

なぜ11月から体調を崩し、ふらつきが出るようになったのか。

この疑問が解消されないと、今回の体調不良の全貌を理解することができません。

Mちゃんは小学生になった時からスケートを始めたので、11月から冷えの影響を受けた原因も追求する必要があります。

このあたりのことに関係する可能性があるとすれば、「環境の変化」ではないかと思いつきました。

すぐに練習環境の変化について聞いてみたところ、夏ごろに練習場を違うところに変えたとのこと。

それ以降、練習回数が増え、一週間あたりの練習時間も長くなったようです。

さらに、新たな練習会場は以前の会場よりも室内温度がかなり低いとのことでした。

これらの条件を加味すれば、練習場を変えたことによって徐々に冷え(寒邪)の影響が身体に蓄積し、数週間を経て消化機能にまで及ぶようになったを機序論できました。


ふらつき ← 脾の弱りによる水邪(湿)の停滞 ← 銀盤による冷え(寒邪)


このように病気のメカニズムを弁証できたことにより、治療方針がより明確になりました。

ストレス → 疲労 → 消化器(脾臓)と治療を進めてきたので、最後に「冷え」に対する治療が残っていました。

そこで冷えを改善するため、陽気を高めるお灸を用いることにしました。

数箇所にお灸をしたところ、先程まで氷のように冷たかった手の平と足裏が温かくなり、そこからサラサラの汗が大量に溢れ出ました。

それと同時に、目の周りにあったクスミが無くなり、顔色に赤みが出て明るくなりました。

体全体がとても温かくなり、久しぶりの身体の軽さを感じている様子でした。


初診としては久しぶりに難易度が高い弁証(東洋医学特有である、診断と治療方針を決める方法)となりました。

小学四年生とまだまだ幼い子供さんなので、自分の健康状態を把握するのは簡単ではありません。

大好きなスケートの技術が本格的に上達する頃に、原因不明の体調不良に見舞われたことになります。

今回は初診でしたが、原因がほぼ究明され、治療の内容も上出来と思われる結果がでたことで安心しました。

この時点では、このまま順調に体調が良くなると信じて疑いませんでした。

ところが、さらなる難題がおこることになります。


つづく



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