江戸時代の「癒」
江戸時代の蘭学者・杉田玄白は、臨床医としても名医だったそうです。 そんな彼は、自分の著書・「養生七不可」の中で次のように言っています。 大抵の病は、薬を服さずとも、自然の力によりて、病は平癒するものなり。 すべて病を治するは自然にして、薬は其力の足らざる所を助くるものなり。 西洋の人は自然は体中の一大良医にして、薬は其補佐なりとも得けり。 現代のように医療が進んでいない時代、健康や病を深く理解して、しかも治療にあたることは簡単なことではなかったと思われます。 彼が「すべての病を治すのは自然である」と思うようになったのは、数多くの治療経験とそこから得た洞察力によるものでしょう。 さらに、「薬はその力が及ばないところを助けるのである」と薬の用いる方法を注意するように喚起しているところからは、彼の医療レベルが高かったことがわかります。 しかも、間違った薬の使い方で体調を崩す人がたくさんいたことも想像できます。 彼が活躍した江戸時代中期は、それまで長引いた戦国の世の中から太平の世へと変貌を遂げていました。 まさに高度成長時代の頂点とも言える「安定成長期」