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小島 秀輝

六人衆 「参」体質改善編


このようにSさんの治療を振り返ってみると、Sさんの体質が良くわかります。

まず一つが腎精の衰微です。

東洋医学では「腎虚」と呼んでいるのですが、年齢とともに低下する生命力を意味します。

Sさんは今年86歳となる高齢者ですから、腎虚があるのは当然と言えば当然の道理。

家族の食事、掃除や洗濯、庭の手入れなど、一般の主婦業のすべてを実践しておられます。

膝が痛くても、喘息が出ていても、腰や手が痛くても、欠かすことなく家事をこなしている姿を見てきました。

腎虚の改善がもっとも重要であることは間違いないことで、この調整を続けてきたことで、腰部周辺のトラブルが軽減し、姿勢が良くなり、腰痛や膝関節痛、手関節痛など多くの整形外科的な疾病が改善できました。

夜間尿が5回から1回まで減少したことは、腎虚の改善が順調であることの証です。


もう一つの重要な調整が消化器である「脾」の問題です。

治療開始当初から逆流性胃炎と喘息がひどく、顔色もくすんで黒い感じでした。

これらが「脾」トラブルであることは明白。

30代、ご主人の転勤で広島の山間部、三つの河川が合流するという場所に移り住んでから、喘息を発症。

転居してすぐに、呼吸器専門の医院のお世話になったとのこと。

その土地の湿度は異常なほどで、部屋の壁が湿気でカビが発生するほどだったそうです。

河川に沿って雲海が広がるようなところだったそうで、風土が人体にどれほど影響を与えるのかをSさんの話から学ぶことができました。

40年以上、喘息の薬を手放せなかったのですが、現在は薬を必要としておられません。

食事の内容や雨天で「痰の増加」で苦しむことはあっても、喘息で苦しむことが無くなったからです。

喘息の改善に伴い、比例して変化したものがあります。

それは、黒くくすんでいた顔色です。

顔全体が日焼けしたように黒い感じでしたが、徐々にくすみが目の周りだけになっていきました。

喘息が消失するようになった頃、目の周囲のくすみも消失し、顔全体が本来の白い肌へとなりました。

途中、目の周りのくすみが赤くなりだしたのが印象的です。

目の周りに痒みが出るようになったのですが、それもひと時のことですんで、まもなくほかの肌の色と同じになっていきました。

冷えによる血行障害が改善し、血流の改善が起こったからだと思われます。

この頃、足首の周囲にあった細絡(静脈が紫色で浮き出る)も消失していきました。

顔色の変化を例えて言うと、ヒグマがパンダへ、パンダがシロクマへと変化したようなものです。

顔色というのは、その人の健康状態を如実に表わします。

伝承医学の東洋医学には「顔」で診断する方法がありますが、顔には臓腑の状態が繁栄されるので、とても重要であることを知っておいてください。


つづく

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