top of page
  • 小島 秀輝

勝負めし 銀盤のフェアリー⑤ ファイナル


話をMちゃんに戻しますと、初診時の問診表に、食欲がない、良く下痢になる、乗り物酔いする、腹が痛いなどの項目に時々起こるという印が付いていたことから、太陰病の状態にまで邪気が入り込んだ可能性が見えてきました。

夏ごろに練習場が変わり、寒さの厳しい環境での練習が増えたことで、邪気が表から裏に入り、11月ごろに太陰病を発症したことが想像できます。

秋ごろまでは軽い太陽病を繰り返す程度で、寒気を感じて軽い蕁麻疹も何度か発症していたようです。

おそらく小学4年生のMちゃんは、銀盤の寒さに抵抗できるだけの生命力が不足していると思われます。

これから成長期に入って身体が大きくなることが、寒さへの抵抗力向上になると説明しました。


2診目までの治療は、漢方でいうところの理中湯の施術を行いました。

太陰の臓である「脾」の調整をしたことで、邪気が裏から表へと追い出され、表である太陽病へと伝経したことが推察できます。

原因不明だったストレスは、外邪である寒が表を侵し、衛気が皮膚に集まり気が滞るために生じたもと推察できます。

3診目の主訴が「蕁麻疹」になったことで、Mちゃんの体調不良の全貌が明らかになりました。


3診目の治療は、「桂枝麻黄各半湯」と同じような施術となります。

治療の目的は、皮膚からうっすらと発汗を促し、皮下の熱を取り除くことです。

2診目の治療ですっかりと裏の冷えが改善し、Mちゃんはスケートの練習で体内に運動熱が生じるようになりました。

本来は、皮膚から発汗して熱を外部へと放出するところ、寒邪に侵されている皮膚は毛穴が閉じてしまい、発汗することができません。

そのため皮下に熱がこもり、蕁麻疹を発症しています。

まずは、身体全体の気の流れを良くする必要があります。

外邪である「寒」こそがストレスの原因だったことがわかります。

続いて、体内にこもって行き場を失っている陽気(内熱)を鍼で除去します。

これによって内部の邪熱が取り除かれ、皮膚の痒みはすべて消失しました。

その後、脈が浮いてきたので、発汗を促す鍼灸を施しました。

今回は、Mちゃんが小学4年生と幼く、身体も小さいことから、「打鍼」を用いて腹部の邪気を散じて調整しました。

打鍼は小児鍼でよく用いるのですが、刺激が軽く身体への負担が少ないこと、腹部の邪気を感じながら刺激を調整できることから、Mちゃんの調整に最適でした。

施術を終えたころから腕の外側の皮膚から発汗があり、乾燥してかさついていた肌に少し潤いが生じました。

治療中の会話で、お母さんからMちゃんの皮膚の乾燥についていろいろと話しも聞けました。

肌のかさつきは以前から気になっておられたようで、保湿クリームを使用してもなかなか乾燥を防ぐことができなかったようです。

皮下に熱がこもるようになると、皮膚の乾燥がひどくなることもわかりました。


このように3診目の治療は、風邪の施術と同じ、「太陽病」に対するものとなりました。

以前から練習前に頭痛があって練習を休むことが時々あったこともわかりました。

頭痛の原因は、太陽病の特徴である「悪寒、頭項強痛」に一致します。

脈診の際に必ず出ているストレスの反応は、寒によるものであることも判明しました。

寒さか厳しい銀盤での練習で、Mちゃんは寒邪に侵され、頻繁に風邪症状を引き起こしていることになります。

初診時は太陰病という「裏」の部位にまで寒の邪気が侵入していましたが、わずか2回の治療で「表」へと伝経させることに成功しました。

初診時、ふらつきの原因である胃腸障害から蕁麻疹という皮膚の病へと変化したので、一瞬戸惑いましたが、「表」である皮膚へと邪気が伝経したことが解明できました。

Mちゃんも、夏ごろからいろいろ続いていたすべての不調の原因が判明したことで、明るい笑顔をたくさん見せてくれるようになりました。

楽しそうに会話してくれる姿は、他の患者さんの笑顔にもつながり、和やかな治療院の風景があります。

鍼はまだ少し怖いようですが、身体が徐々に良くなっていることを実感できるようで、治療に来るのを楽しみにしてくれているようです。


「勝負飯は何かな」とお母さんに相談するところは、ただのフェアリーでない予感がします。

Comments


bottom of page