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小島 秀輝

鬼の霍乱 玖 「霍乱」


先のブログでご紹介したように、時代背景から鬼について詳しく見てみると、身体の丈夫な人というイメージというよりも、平安時代の疫病に対する当時の人々の畏怖の念に関係があるように思います。

医疾令の中に、「典医薬は歳ごとに、傷寒、時気(ときのけ)、瘧、痢、傷中、金創」という病名があり、それぞれに合わせた薬を準備するように定めています。

平安時代も、これらの病気に警戒と入念な準備をしていたことがわかります。

「霍乱」という病は「傷寒論」の中に含まれており、その上、「鬼」と頭に付けていることから、傷寒の中でも特別な意味をもっていたのではないかと考えます。


そんな霍乱ですが、どのような病だったのでしょうか。


「霍」という字には、にわか、はやい、という意味があります。

それゆえ霍乱という病は、発病が突然であったり、症状が急速に悪化したりする病であることが想像されます。

古くは「黄帝内経」の中に「霍乱」を見つけることができますが、その200年後に書かれた「傷寒論」でより詳しく論じられているので、そちらを参考に見ていきます。

傷寒論の最後の章に、「弁霍乱病脈証并治」があります。

その初めに、「病有霍乱者何、答曰、嘔吐而利、名曰霍乱」とあり、訳すと「嘔吐して利するを、名付けて霍乱という」となります。

吐いたり、下痢をしたりするということは、上下に飲食物を受け止めることができないことを表します。

私たちは他の命を食べて生きていますが、その生命力を自分の命に変えることができない状態です。

さらに「吐利、悪寒、脈微而復利、利止、亡血也、四逆加人参湯主之」とあります。

悪寒、つまりなんとも言えないくらい寒い状態で、やはり風邪に似た症状があります。

脈が「微」ということは、身体の生命力がすっかり衰えて、邪気と戦う力が弱り果てていることを意味します。

吐き下しの後、また下痢を重ね、いつまでも下痢が止まない。

腸の中には何もないぐらいなのに、また下痢をするので、体力、気力を消耗し、体液までもどんどん消失し、命を削られるような様子です。

「亡血」とは、血液が失われる状態。

これは虚労と呼ばれる状態で、生命の火が衰えて消えかかっていることを意味します。

続く章には、「四肢拘急」や「「手足厥冷」を起こすことがあるとあります。

四肢拘急とは手と足が引きつれてこわばること、手足厥冷とは体温を維持できなくなって手足から冷えてくる状態のことです。


このような状態となった人には、四逆加人参湯を与えなさいとあります。

人参で、生命力を鼓舞し、元気をつけ、身体に潤いをもたらします。

甘草は、急を鎮めて、こわばりを鎮める。体内を平和にして、臓器をまろやかにする。

乾姜で、心下にある胃を大きく温め、寒気を取り除き、心臓の働きを元気づける。

附子は、からだ全体を大きく温めて、元気を取り戻す。

これら四つの生薬の力で、生命の火が消えかかっている状態を救います。


傷寒論にある症状と生薬の内容から、霍乱は「食中毒」であると想像できます。


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