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  • 小島 秀輝

小さな約束 フィギュアスケート篇 前編



今年も残すところ3か月あまりとなりました。 春から今日まで、数名のアスリートを治療してきました。 フィギュアスケートのMちゃんもその一人です。 Mちゃんについては「銀盤のフェアリー」として、昨年からの治療経過をブログで紹介してきました。 3月の大会で目標の三位入賞を果たし、強化選手の仲間入りを果たしました。 昨年、めまいや頭痛など複数の症状がありましたが、順調に体調が回復し、今ではそれらが出ることは無くなりました。 楽しみにしていた7月の強化合宿を体験し、8月には2回転半のジャンプを完璧にできるまでに成長しました。 肉体もかなりがっしりしてきて、太腿や臀部の筋肉が肥大したこと、腹筋の有り様がダントツに変わったところに、彼女の努力が伺えます。 体脂肪率が少ないのはもちろんですが、シックスパックと呼ばれる腹筋を獲得できている点は、本当にすばらしいと思います。 3回転ジャンプ習得へと駒を進める段階となり、確実に体型が変化していることを私も感じていました。 春のように体調を崩すことはなくなりましたが、練習の疲労は少しずつ蓄積するようになり、一、二週間に一度、腰の違和感があったら治療院でメンテナンスをするようになりました。 10月の大会へ向けて、順調にパフォーマンスが上がっていたので、私も安心していました。 ところが、9月に入ってすぐ、Mちゃんのお母さんから足を痛めたとの連絡が入りました。 8月まではジャンプの着地の負担による足首の痛み、回転の際に膝が太腿にあたる打撲など、些細な怪我はありましたが、今回は事情が異なる予感がしました。 治療当日、Mちゃんから事情を聞くと、マット運動中に開脚をした際、股関節に痛みを発症したとのこと。 実際に片足ずつベッドに足を上げてもらい、前屈をしてもらいました。 痛めた右足の方は、ほとんど前方へと体幹を倒すことができません。 痛みはお尻と太腿をつなぐあたりにあります。 この段階では太腿の前に痛みは確認していないのですが、後に右足を上げる動作で痛みが出ることもわかりました。 患部が特定できたので、次に全体の筋肉のバランスを調べてみます。 練習の成果が太腿やふくらはぎ、臀部や背筋など各部位にしっかり確認できます。 その中で気になったのは、痛めた右足と反対の左太腿の筋肉の緊張です。 左足はジャンプやスピンの軸足となるので、トレーニングの負担が顕著に出るのか、かなり筋肉全体が硬くなっていました。 幸い、痛めた右足の患部には内出血や硬結は無さそうです。 このことから、怪我が比較的軽症であることを想像できました。 負傷して1日しか経過してないので、明日の練習は休むことにし、治療後の回復具合を確認することにしました。

負傷後初日の治療は、練習による疲労の蓄積を取り除くこと、負傷により生じた身体のバランス調整、さらに回復力を上げることの三つになりました。 回復力を上げることは、復元する力を最大限に引き出すことになります。 自ら傷を癒すという、本来、身体に備えた生命力の活性化と言っても過言ではありません。 身体の回復力を上げる治療は、伝承医学である東洋医学が持つ特異な治療システムです。 身体の負担がほとんどないので、小さな子供さんでも安心して治療を受けてもらえます。 Mちゃんは、鍼を刺すタイミングで必ず「1ミリ」と私に質問します。

深く鍼を入れられるのが怖いみたいで、何回治療を経験しても、鍼の深さは気になるようです。 ほとんどの場合、鍼の刺入の部分は3ミリ程度ですので、鍼が苦手な方にもオススメです。

治療後、再度右足をベッドに乗せてもらい、前屈を試したところ、少し可動域が広がり、身体を倒すことができました。

太腿の痛みの箇所が少し移動して、お尻の付け根あたりの方が痛むようになりました。

治療の効果を確認して、初日の治療は終了。

炎症はあまりなさそうでしたが、念のため、入浴で患部を温める行為は控えてもらいました。

翌日は練習を休むことにして、治療を継続することにしました。


つづく

次の日、昨日よりも前屈ができるようになっていたので、治療後の状態はさらに良くなることができました。

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